本研究では,能動的な学習を支援するための学習ログ管理システムの構築と,ここから得られた学習ログを分析することによって,学習者の学習特性や能力といった学習プロファイルを獲得するための研究に取り組んだ.令和元年度から引き続き,対象とする日本語教育において,学習者がWebページを閲覧中に気になった語句を辞書で提示し,その調べた語句を収集してその類語をもとに問題を自動生成する仕組みに関して,期間延長後の令和2年度においてもその手法の改良を実施した.問題の自動生成に利用した単語分散表現モデルを構築するうえで必要なコーパスデータを検証し,対象とする日本語学習の問題構成に適したモデル構築を実施するとともに,これを問題自動生成に応用することを可能とした.これらの問題をe-learningに組み込み,学習者が閲覧し調べた語句をもとに,e-learning上でその語句に関する問題に解答することが可能となった.一方で,学習者の単語の登録履歴や学習者のe-learning上での活動履歴をベースに,学習者情報に関するクラスタリング手法を確立することが可能となっており,学習者の詳細な学習プロファイルを教師が閲覧し,この情報をもとにした指導を実施できる基盤が構築されたと考えられる.これにより,学習者に対するフィードバックが可能となったことから,本来の研究目的でもある,学習者を中心とした学習ログデータの1つの循環環境を生成することができた.今後は,この循環環境をベースにした実証実験を通して,本研究の有用性を示していく必要がある.
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