特別支援学級において,読み書きの困難さは多くの児童が直面する問題である.この困難さは,その他様々な学習にも影響を及ぼす問題である.このような困難さは,一般的にはWISCなどの検査によって検出するが,検査結果自体は定量的に示されるものが主であり,現場教員が指導に生かすことが難しい.また,このような児童は文章の作成を試行錯誤しながら学ぶことも不可能とされている.そこで本研究では,日常生活も題材にされることの多い算数文章題を題材として,この構造をモデル化,モデルに基づく学習支援システムを構築し、読み書きに困難を抱える児童でも,文章を組み立てる学習を可能にしている. 平成29年度は,教師用システムの改良と,乗除算の作問学習支援システムの実践利用に取り組んだ.この結果,提案モデルに基づけば,従来実施していた加減算の文脈だけではなく,乗除算の文脈でも演習が成立する事が確認できた.また,教師用システムの改良は,学習者の演習状況の把握と指導を容易にすることができた. 平成30年度はこの結果を詳細に分析し,本システムに基づき.読み書きに困難さを抱える児童は,少なくとも(a)単文を理解できない児童、(b)単文を理解できるがその組み合わせは理解できない児童、(c)単文の組み合わせは理解できるが、より複雑な文章は理解できない児童に分類できることが確認できた.これにより,数量ではなく具体的な状態として,教員は児童の困難さを把握できる.この結果は,国内外の学会で報告済みである.また,通常学級と特別支援学級の両方のログデータを,隠れマルコフモデルを用いて分類し,提案モデルで説明することで,より詳細な学習者モデルが構築できるという知見も得られた.そこで通常学級の6年生121名を対象に実践利用を行い,通常学級のログデータを収集,分析のためのデータを揃えることができた.その分析のための基本的な環境構築も行った.
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