植物におけるゲノム編集技術の応用は、医学への応用や、動物への応用と比較しその倫理的ハードルの低さから他の生物に比べていち早く社会にリリースされる可能性が高い。現に、2016年4月には、米国農務省(USAD)が、CRISPR/Cas9を用いてゲノム編集したマッシュルームへの規制はしないと発表している。ゲノム編集技術に対して、遺伝子組換えと同じような厳しい規制をかけるのか、必要ないとみなすのか、あるいは別の考え方で対応するのか、各国で議論されており、ゲノム編集作物に新たな規制の枠組みが必要かどうかを議論が始まっていた。2018年3月には、USDAは、ゲノム編集のメリットを強調し、「規制を行うことはない」と表明している。一方、欧州では全ての食品に表示を義務付けているほか、欧州司法裁判所は、ゲノム編集の品種は全て遺伝子組み換えとして規制する判断を示している。 このようななか我が国においては、厚生労働省の専門家会議が2019年末に報告書をまとめており、ここでは同省の調査会に情報を届け出することで販売が可能となっている。現在、表示義務化に関しては検討が進められている。このように、遺伝子組換え技術とは異なり規制の対象外となりつつあるゲノム編集によって作出された作物は、遺伝子組換え作物とは異なった社会受容をもたらすことが予想される。突然変異をデザインするといった従来の品種改良技術の範囲のゲノム編集は、従来の品種と同様なものとして社会に受け入れられていくのであれば、大きく社会に浸透していくと考えられる。最近では、植物受精卵でのゲノム編集に成功も報告され、遺伝子組替えのプロセスを経ず戻し交雑等が必要ない方法の開発も期待される。
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