今年度は、昨年度に桜川低地で採取した2本のボーリングコア試料についてさらに分析を進めた。1つ目は虫掛中央公園における長さ12mのオールコア、2つ目は土浦市市民運動広場における長さ30mのオールコアである。 昨年度、虫掛中央公園のボーリングコア堆積物の記載時に、放射性炭素年代測定のための試料を抽出しており、今年度はその試料の放射性炭素年代測定を業務委託した。その結果、-400cmの腐植質シルト層から得られた木片で9815±35BP、-555cmの砂礫層から得られた木片で13700±40、-1023cmの腐植質シルト層から得られた植物遺体でバックグラウンド以下という結果となった。砂礫層の上位は砂質シルト層であり、干潟環境が想定され、続く腐植質シルト層では後背湿地が形成されていく様子が捉えられた。縄文時代の海域の中心域ではないものの、縄文海進および海退の様相がつかめたと言える。 これらの結果より、-5m前後の砂礫層は、完新世基底礫層あるいは沖積層基底礫層に相当するものと考えられた。2つ目の市民運動広場コアについても、-6~12mに厚い砂礫層が堆積しており、対比できるものと考えられる。 以上のことから、これまでの先行研究では、桜川低地の深い谷は沖積層のみで埋められていたと考えられていたが、近年、桜川河口部での研究成果から植木(2019)が指摘していたように、桜川下流部においても、その谷は沖積層よりさらに古い堆積物が続いていることが明らかとなった。 研究期間全体を通して、土浦市内の遺跡出土資料を用いた放射性炭素年代値と海洋リザーバー効果、現生ヤマトシジミと貝塚出土貝類の安定同位体比について成果を蓄積することができた。また、市内桜川流域の沖積層の調査研究では、新しい見解を提示することができた。
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