研究課題
本研究は,本州における縄文時代の人骨の安定同位体分析を行うことで,縄文時代人の食性について詳細に明らかにすることを目的とする。食性の地域的な多様性を明らかにすること,季節的な変化を明らかにすること,新たな元素の同位体分析による食性推定の高精度化を目指すことの3つを研究の目的とする。これによって,縄文時代人の食生態や環境への適応,そしてその要因についての理解を深めることができると考えられる。本州縄文人の地域的な食生態を明らかにするために,東海・近畿・山陽・中部地域を中心として,収集した古人骨試料のデータ解析を行った。これによって,遺跡ごとに特徴的な食生態を示すことが明らかとなった。この結果について,論文を執筆中である。また,新たな元素の同位体分析手法の確立のために,骨資料から亜鉛を,陰イオン交換樹脂を用いて分離する実験を行った。試料は縄文時代の古人骨10体に加えて,現生の海産貝類の試料を分析した。カラムに溶解させた試料を通し,酸を連続的に加えて抽出される溶液を連続的に採取した。抽出した亜鉛の同位体比を,マルチコレクタ型誘導結合プラズマICP-MSにより測定した。亜鉛同位体比の測定結果が得られたが,機器の調子が悪く良好なデータが得られなかった。昨年度までに得られた結果を基に,論文を執筆中である。本年度の研究成果は,日本文化財科学会,日本地球惑星連合大会などで発表し,他の研究者と有意義な考察を行った。またアウトリーチ活動として静岡県内で公演するなど,一般に研究内容を分かりやすく紹介した。
日下宗一郎,2019年4月25日,古人骨はかく語りき-同位体分析による縄文時代人の食性-.サイエンス・カフェin静岡.静岡大学理学部主催日下宗一郎,2019年9月22日,骨から分かる縄文人の食性と移動. NHKカルチャー 2019年度ヤマト王権・古代史講座 縄文再発見日下宗一郎,2020年2月15日,同位体分析から探る縄文時代人の食性と集団間移動. 令和元年度「富士山の日」歴史講演会
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Science of The Total Environment
巻: 704 ページ: 135449~135449
10.1016/j.scitotenv.2019.135449
文化財科学
巻: - ページ: -
縄文時代文化研究会第二回研究集会発表要旨「縄文時代葬墓制研究の現段階」
巻: - ページ: 117-121