水中保管時における木製遺物の劣化には、好気性微生物の活動が大きく影響していると考えられる。これまで研究代表者らは、実際の遺物の水中保管環境において溶存酸素を低減する方策を検討、考案してきた。本研究では、溶存酸素の低減による木製遺物の劣化抑制効果を中長期的かつ定量的に評価するため、出土木材を試料とした腐朽実験をおもに実施した。 その結果および既報の成果との比較検討から、溶存酸素の低減による還元環境の創出が、水中保管環境における木製遺物の劣化抑制に有効であることをあらためて示した。また、これを実現するための人的・経済的な負担や環境負荷が小さく、簡便かつ継続的に運用可能な手法を提示した。
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