研究課題/領域番号 |
17K12972
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
大八木 英夫 日本大学, 文理学部, 助教 (50453866)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自然地理学 / 水文学 / 陸水学 / 湖沼 |
研究実績の概要 |
本研究では,湖沼における気候変動の定量的な影響規模やそのメカニズムに関する研究について,湖水循環の微細鉛直流および水温成層・結氷現象,湖水量の変動に着目し,循環パターンの変化とそれに伴う水質変化を解明することを目的として,初年度である平成29年度は,計画に沿って下記のとおり実施してきた。 1)夏季,結氷前,解氷後など,季節の異なる時期における観測と複数の湖沼の湖水循環パターンを明らかにするための観測網を充実させることで研究計画遂行している。計画にあった,倶多楽湖や摩周湖に加え,日本で最深の湖沼である田沢湖の観測地として加えた。さらに,摩周湖は流出河川がない閉塞湖であるため,火山山麓周辺地域では湧水が発達しており,その起源の一部には摩周湖の湖水からの浸透水の影響していることから,摩周湖およびその周辺の湧水の滞留時間の考察に関する水質分析と湖水と地下水との相互関係の解明について,環境データの収集と現地観測を実施した。 2)湖水循環速度を測定する自記録計の設置に着手した。特に,倶多楽湖では,水温・水位とともに新たに,水質や鉛直循環流の計測のための機器を導入し設置した。摩周湖では,水温の計測を継続し,さらに,倶多楽湖・摩周湖に加え,田沢湖においても湖底に水温計の設置をおこなった。いずれも,100mを超す大深度湖沼であり,気候変動における水温や湖水循環の影響について観測を行っている。 その後も定期観測を実施し,既存研究のレビューや学会に参加しながら,研究計画をさらに進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である平成29年度は,対象地域における機器設置の調査許可や研究体制を構築し,定期観測も継続しながら,関連する既存情報の収集を実施してきた。現地採取試料の分析に一部遅れが生じているが,その点を除いては,次年度に向けて,発展継続的に研究が遂行できる土台を築けたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に1年目の作業を引き続き継続することは,周年特性を把握し長期的な変化をまとめる上でも重要であるため,そのまま定期観測を継続する。特に,循環期の地域的な違いについて比較・解析を行う計画である。また,現地採取試料の分析や機器の保守について継続していき,大深度湖沼の深層の環境を解明するにあたり,実測データを基に比較していき収集した情報を順次GISデータベースの構築など実施していく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
定期観測時における現地の悪天候などにより,現地採取試料の分析に一部遅れが生じており,これに伴う分析のスケジュールが遅らせざるおえなくなったため,主に,その分析に関する費用として計上していた額が減少した。天候に左右されない,水質分析に代わる,自記録計の導入や目標を達成するために必要な水質分析について効果的,継続的に実施していく。
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