本研究では,湖沼における気候変動の定量的な影響規模やそのメカニズムに関する研究について,湖水循環の微細鉛直流および水温成層・結氷現象,湖水量の変動に着目し,循環パターンの変化とそれに伴う水質変化を解明することを目的とした。 3年目は,特に倶多楽湖湖底の鉛直速度と溶存酸素の関係について考察を行なった。2017年10月の倶多楽湖では,表層の溶存酸素飽和度は96.5%で溶存酸素が豊富な状態にあった。水温躍層はおよそ15mの深度になり,最大117.3%の酸素過飽和層が形成されていた。約40m以深から溶存酸素飽和度が減少し,水深140mでは84.1%となった。146mには約50%,湖底直上では無酸素層(0.0%)となった。湖底の無酸素層は,2017年12月25日には水温変化に伴い水密度が湖底まで均一となり,湖底にまで鉛直循環が到達し無酸素層が解消されたと考えられた。この時の,上方方向に鉛直流速は4.6cm/sであった。鉛直速度を過去の事例と比較すると,混合時の速度として有意の値であったといえる。以降,循環は活発となり,約10cm/sに達する速度が時折計測された。2018年2月5日には,表層では完全結氷が確認されており,その直前に41.8 cm/sと期間中の最大鉛直流速が確認された。これに加えて,2018年9月6日に生じた胆振地方地震前後には,地震による湖底流速の変化と湖底水温の変化について確認できた。本現象に関しては,鉛直中の発生と水温変化がおこる時間帯にずれが生じており,さらなる解析が必要とされ課題が残ったといえる。大深度湖沼における湖底直上の微細な鉛直流速の実測例は少なく,本結果により,表層の溶存酸素飽和度と湖底の溶存酸素飽和度と鉛直合成流速の季節的変化について示すことができた。
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