研究課題/領域番号 |
17K12975
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
足立 幸穂 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究機構, 研究員 (50512448)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 降水日変化 / 数値シミュレーション / 局地気象 |
研究実績の概要 |
領域気候モデル(SCALE-RM)による降水日変化再現性の調査のため、まず境界値データに使用する解析データとして気象庁の客観解析データ(GANAL)の取得とSCALE-RMで使用するためのフォーマット変換を行った。また、SCALR-RMによるモデル結果の比較データとして、JRA55をメソ数値予報モデル(MSM)でダウンスケールすることにより作成されたJRA-55領域ダウンスケーリングデータ(DSJRA-55)の取得を行った。さらに、解析を行うための降水変数の切り出しやフォーマット変換等のデータ整備を行った。モデル結果のリファレンスとなるアメダス観測による降水データについても、解析のためのデータ整備を行った。 初期解析として、GANALを境界値としたSCALE-RMによる水平解像度7.5kmと2.5kmダウンスケール実験を行なった。鉛直層数はそれぞれ36層、60層である。対象年は2008, 2010, 2011年の3年間の夏季(6-9月)とした。夏季を選択した理由は、(1)年間でもっとも降水の多い時期である、(2)複数の現象(梅雨前線、温帯低気圧、対流性降水、秋雨前線、台風)による降水を含んでいるためである。その結果、観測の降水日変化は7時と16時ごろに極大、12時に極小となるが、モデルでは、2.5km、7.5km共に朝の極大はほとんど再現できなかった。また日中の降水ピークは、観測では12時に極小となった後徐々に増加していくが、モデルは10時ごろから徐々に増加していく傾向にあった。水平格子サイズ2.5kmの計算は、7.5kmの計算と比較して、水平解像度、鉛直解像度のどちらも高解像度であるが、両者の違いは観測とモデルの違いよりも小さく、高解像度化による日変化再現性への影響は今回の実験では小さかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画通り、データの取得と実験準備については順調に進んでいる。しかしながら、データ取得と解析のための準備などが予定よりも時間がかかり、計画していた実験の一部しか遂行できなかった。その点において、「やや遅れている」とした。しかしながら、実験準備と解析準備等は整っているので、今後の解析にかかる時間は短縮されると見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
計画に従って、実験の実施と解析を進める。モデル大気の空間解像度や地形解像度などの設定を変えた実験を行い、水蒸気輸送量、雲の形成、降水のタイミングがどのように異なるのか、どの設定が降水日変化再現性にとって重要であるのかについて、解析と検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度、ネットワークハードディスクを購入予定であったが、初年度に行ったデータ整備、および、計算結果は、既存のディクスクで収まる範囲であったため、購入を見送った。次年度は、当初の計画通り国内学会に加えて、海外での発表を行う予定である。また、すでに論文執筆を行なっており、投稿のための英文校正費や投稿料にも使用する予定である。
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