今年度は、昨年度実施した、日射固定実験の解析を行った。対象地域は、近年、豪雨に伴う土砂災害が発生している広島や岡山を含む中国地方とした。日射固定実験では、日射量を06JST、09JST、12JST、15JST、18JST、そして全く日射がない状態として00JSTに固定した状態で、2011年6-9月までの計算を行った。それぞれの感度実験の名前を、Exp06、Exp09、...、Exp00とする。また、基準実験(CTL)として、日付通りの日射を与えた再現実験も行った。 まず、日射があることによる降水量への影響を見るため、Exp00とCTLの総降水量を比較した。その結果、日射は、日射が全くない場合に比べて降水を1.5倍に増加させることが示された。次に、日射の量の影響をみるため、日射固定実験とCTL、及び、Exp00の比較を行った。Exp06、Exp09、Exp12、Exp15、Exp18の日射量は、それぞれCTLの0.21倍、2.25倍、3.24倍、2.41倍、0.37倍である。一方、日射量が変わったことによる降水量変化のCTLに対する比は、それぞれ-0.07倍、3.21倍、5.60倍、3.75倍、0.20倍であり、Exp09、Exp12、Exp15では、日射量の増分よりも降水量の増分の方が多かった。Exp06とExp18の降水量は、そもそもExp00と同程度であった。 日射量が変わったことによる降水への影響には、2つの要因が考えられる。1つは、不安定度が増すことで、対流が活発になること。もう一つは、局地循環を強めることである。今回の実験では、どちらの影響も含んだ結果となっている。また、解析対象期間の4ヶ月の間には、さまざまな天候の日が含まれており、日によって、それぞれの影響も異なる。2つの影響の切り分け、及び、天候別の影響度の違いについては、今後の課題である。
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