研究課題/領域番号 |
17K12980
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
福田 恵美子 東京工業大学, 工学院, 准教授 (50546059)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 待ち行列 / ゲーム理論 / シミュレーション / 実験室実験 |
研究実績の概要 |
令和元年度には、平成30年度に設計した実験室実験を実施し、理論結果、およびシミュレーション結果との比較をおこなった。 また、実験で離散時点待ち行列ゲームとの対比に用いた Otsubo & Rapoport (2008) のモデルに対して、当該論文で用いられている均衡導出アルゴリズムとは異なる均衡導出アルゴリズムを与えた。このアルゴリズムは、平成29年度の成果である、待ち行列ゲームの均衡を導出する数値計算アルゴリズムの特殊バージョンとして得られ、離散時点待ち行列ゲームが Otsubo & Rapoport (2008) のモデルの一般化になっていることも確認できた。 実験結果からは、以下の知見が得られた。①実験結果を集計した到着時点分布の形状は、理論での均衡到着時点分布に似通っており、概ね理論結果を再現できていると言えるが、②平均待ち時間は均衡での期待待ち時間よりも短く、より効率的な結果が得られていた。①および②はシミュレーションでも得られた結果であったので、実験での被験者の行動様式について詳細に調べたところ、③シミュレーション・モデルで仮定したエージェントの行動様式に近いが、より直近での結果に影響されやすいということがわかった。今後は、シミュレーションや実験において、均衡より効率的な結果が得られる理由を探るとともに、本研究で導出している対称均衡より効率的な均衡について調べていく。 基本モデルでの実験から上述のような知見が得られた一方、実験参加者が想定より集まらなかったことと、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、サービス提供者側の戦略が変わった場合にどうなるかを調べるための条件を変えた実験は実施できなかった。対策としては、再び実験室実験が実施できるようになるまで比較実験を延期する方法と、オンライン実験により全実験をやり直す方法があるが、後者に向けてオンライン実験の環境を整備していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
基本的な拡張モデルに対して均衡を求めるアルゴリズム、理論結果を再現可能なシミュレーション・モデルを作成し、両結果と実験室実験の結果とを比較できたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、以下の2つの問題を抱えた。 (1) 上記研究結果を令和元年度3月に発表予定であったが、出張中止により、研究発表の機会を失った。 (2) 分析を進めるためには、サービス提供者側の戦略が変わった場合にどうなるか調べるため、条件を変えた実験を実施することが必要であるが、実験室実験の実施は困難である。(3) さらに、実際の施設における混雑状況を調査し、理論結果等と比較することも、新型コロナウイルスの影響から非常に困難と言える。 問題(2)については、代替手段となるオンライン実験の実施に向けて準備を進める等、臨機応変に対応しているが、進捗状況としてはやや遅れていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
オンライン実験を実施するための環境整備する。実験環境が整い次第、サービス提供者側の戦略が変わった場合どうなるか調べるため、条件を変えた実験を実施する。 ただし、実験室実験とオンライン実験との結果の違いを考慮するため、令和元年度に実施した実験も、オンライン実験で再度実施する必要がある。 また、理論研究においては、サービス提供者側の戦略として当初想定していた時間帯ごとのサービス提供価格などを取り入れた多段ゲームとしての分析を引き続き進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で、条件を変えた実験を計画通りに実施できなかったため、主に謝金などの人件費を繰り越している。これは、次年度以降に、オンライン実験の環境整備と、オンライン実験での実験参加者への謝金、および実験補助やデータ解析補助を担当する研究協力者への謝金に充当する予定である。
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