社会状況を加味して実施予定であった実験研究については、コロナ禍は落ち着き始めたものの依然として研究協力者(実験参加者)が集まらないという問題を抱えたままであり、理論検証に足る十分なデータを得られる実験ができなかった。このため、当初予定していた、理論研究に対して実験研究から検証をおこなうプロセスが新型コロナウイルス感染症の影響を受けて達成できなかった。 一方、代替研究として令和3年度までに限定合理性を取り入れたシミュレーションを実施したことで、ある種の限定合理性を取り入れることで、現実社会で起こりうる帰結に近い予測ができることが示唆された。これを受けて令和4年度は、複数の学習過程を用いたシミュレーションをそれぞれ実施しその結果を比較することで、客の学習方法の違いが結果に顕著な差異をもたらすことを明らかにした。また、客の到着頻度やサービス処理速度等、サービス側の性質を表すパラメータの影響を受けやすい学習過程があることもわかった。さらに、客が学習に用いる情報の種類により混雑が緩和され得ることも示唆された。今後、より詳細な設定・比較検証をすることで、効果的な情報提示により混雑低減をする仕組みを提案したい。 最後に、理論研究に関しては、新型コロナウイルスワクチンの大規模接種会場でも用いられた予約方法である時間帯予約システムを取り入れた待ち行列ゲームについて、関連する研究課題(22K11927)により研究が進められている。当該モデルに対する実験による理論検証も今後計画しているが、この研究の遂行は研究課題(22K11927)の研究の一環として進めていく。
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