研究課題/領域番号 |
17K12985
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
佐藤 公俊 神奈川大学, 工学部, 助教 (60609527)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 収益管理 / 価格決定 / 購買行動 / 数理モデル / 在庫管理 / 不確実性 |
研究実績の概要 |
本研究は顧客の購買行動を考慮した価格決定モデルを構築することで、購買行動が価格変動に与える影響の分析と消費者にとっての安心・安全な購買環境の実現を目指すことが目的である.当年度は(1)購買延期オプションを考慮した動的価格決定モデルに関する研究,(2)従量課金制販売における最適価格決定に関する研究を行なった。 (1)では,近年,航空業界では価格変動に対する顧客の不公平感を低減するための取り組みとして,購入を数時間の間,延期できるオプションが販売されている.このような延期オプションが販売価格および企業収益にどのような影響を与えるかを分析することが目的である.しかし,顧客の購買延期行動を考慮すると状態数の増加により計算が困難となる.そこで,線形計画法による近似手法により企業収益を分析した.ここまでに得られた成果をInternational Federation of Operational Research Societiesと日本オペレーションズ・リサーチ学会にて報告した. (2)では,モノのネットワーク化であるIoT(Internet of Things)を応用し,製品の使用量に応じて料金を課金する従量課金ビジネスにおける価格決定問題について考察した.IoT化により企業および消費者に様々なメリットが存在するものの,通常の製品の販売とは異なり,使用量に応じて企業収益が変動するリスクが存在する.このような将来の収益に関する不確実性の下で企業の期待収益を最大化するための最適な課金単価を決定するモデルを構築した.これにより,従量課金販売によって企業収益の拡大を可能にする条件を明らかにした.この成果を論文にまとめ,現在,論文誌に投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は,近年オンラインで導入が進んでいる(1)動的価格販売(ダイナミック・プライシング),(2)カスタマイズ販売,(3)マッチング販売のそれぞれについての消費者の公平性という視点から価格戦略を分析・評価することである.(1)については,購入延期オプションを取り入れた価格決定モデルを構築し,学会での発表まで実施することができたため,目的はおおむね達成できたといえる.また,(2)については,従量課金ビジネスに着目し,消費者個々の使用量という特性に合わせて課金単価をカスタマイズするモデルを提案した.本研究は論文投稿まで進めることができたため,全体の達成度の評価として,順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は動的価格販売とマッチング販売に取り組む.まず,競争環境下における動的価格方式における価格の平均的な傾向と変動の大きさについて分析する。現在販売されている競合区間における航空運賃を調査し,実際の価格変動について分析する.そして,理論モデルを用いたシミュレーション結果と比較することによって,価格決定メカニズムの透明性について検証する.また,並行して,近年利用が進んでいるWebボットと呼ばれるチケットなどのインターネット上で販売される商品を自動的に検索するサービスが商品価格に与える影響について分析する.動的価格販売では,常に価格が変動するため,ソフトウェアにより自動的に予約を行うことでその時点での価格を一時的に確保することが可能である.このような購入する意思のない予約は在庫の減少に伴う販売価格の上昇を引き起こすため,購入を希望する顧客が高値で購入しなければならない可能性がある.そこで,平成30年度では,Webボットの存在を考慮した動的価格決定モデルを提案し,顧客の安心・安全な購買の実現を目指す. さらに,次年度の後半より,マッチング販売における価格決定の研究をスタートする.ここでは,現在進めているイベントチケット販売におけるマッチングサービスを考慮した価格付けモデルを応用し,使用済み製品の買取サービスにおける売り手と買い手のマッチングに着目する.適切な買取価格と再販売における適切な販売価格を決定することで,企業の収益拡大と利用者の満足度を最大化することでリサイクルの活性化を目指す.
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