研究実績の概要 |
昨年度までに得られた知見を基に,本年度は主にフェロセンを含有したマイクロエマルション (ME) のプール火災に対する消火性能の評価を行った.なお,ME 構成成分の界面活性剤を Triton X-100 とした場合,起泡性が高く,これが消火性能に及ぼす影響を排除できないため,本研究では界面活性剤として Noigen TDS (NT) を用いた場合の ME の消火性能について検討した. この ME は油相として n-オクタンを含む.従って,フェロセンの燃焼抑制効果がn-オクタンの燃焼性に勝る必要がある.そこで,n-オクタン濃度がフェロセン含有 ME の消火性能に与える影響を明らかにするために,フェロセン濃度を 100 ppm に固定したまま n-オクタン濃度を 2.1 wt% から 10.5 wt% まで変化させて消火実験を行った.その結果,予想通り,油相濃度が小さいほどその消火性能が高いことを確認した. 次に,ME の消火性能に及ぼすフェロセン濃度の影響を評価するために,2.1 wt% の n-オクタンおよび 0-1,000 ppm のフェロセンを含む ME を調製し,その消火時間を測定した.その結果,本実験条件ではフェロセン濃度によらず既存の強化液消火剤よりも高性能であるとともに,フェロセン濃度が 100 ppm から 1,000 ppm の範囲ではその消火性能に有意差が見られなかった.これは,フェロセン濃度を 100 ppm 以上にする必要が無いという製造プロセスや価格といった実用上の利点が見い出せる結果であると言える.
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