本年度では,2018年度に実施した協力企業での実地調査のフォローとして,その後の追跡調査(聞き取り調査)とそこから浮彫になった課題について関連研究の調査を行い,今後の方向性の検討を行った. 具体的には,雑談誘発のためのディスプレイシステムを設置した協力企業の休憩スペースに対して,あまり足をは運ぼうとししなかったメンバを対象に聞き取り調査を実施した.その結果,足を運ぼうとしない理由として「仕事が忙しく,足を運んで談笑する時間がもったいない」「行くと『サボっている』と思われるような気がする」「休憩室での人間関係が負担」といった声が寄せらた(なお,この企業では休憩スペースの利用可能時間帯を限定していたため,そのことに対して「自分の仕事のペースでの利用と合わない」といった声も聴かれた).また,システムの設置の狙いに対しては,認知はしているものの,そのコミュニケーションの促進効果に対しては悲観的に見ていることが分かった. 本研究での一連の取り組みは,仕事に関する雑談を促すという目的のもと,「雑談誘発情報ディスプレイシステムの設置」という環境面へのアプローチによって,どこまでのことが可能であるかを把握する取組みであったともいえるが,その結果としては,ある程度の効果は見込めるものの,そもそもコミュニケーションをとることへのニーズに乏しいメンバにまではその効果は及ばないことが,今年度の成果として明らかとなった. この結果に対して,「そもそもの課題認識や施策に対してオーナーシップを持たせるような取り組みをしていなかったからではないか」と考察し,今後の研究に向けてオーナーシップを高める取り組みとはどのような取り組みかについての研究を行う必要があることを見出した.
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