研究課題/領域番号 |
17K12992
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
安達 悠子 愛知大学, 文学部, 准教授 (40629945)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 不安全行動 / 医療 / 中断 |
研究実績の概要 |
本研究は,作業を再開する際に,ある作業をしたと思ったり,まだしていないと思ったりという記憶錯誤から起こる不安全行動がどのような環境で生起しやすいかを明らかにすることが目的であった。そのため,主課題の途中に種類の異なる挿入課題を入れて中断を生起させ,挿入課題が主課題へ及ぼす影響を検討した。実験で用いる課題や実験状況は薬剤関連の医療事故を模して前年度までに準備したが,本年度に実験を実施するにあたり課題や実験デザインは一部見直した。ただし,大きな変更はなく,主課題は薬剤の確認,挿入課題は認知的な処理の程度が異なる2種類で,認知的な処理が高い挿入課題はアナグラム(文字を組み替えて単語を作る),認知的な処理が低い挿入課題はリーチング(手を伸ばして刺激に触れる)であった。社会情勢を鑑みた上で十分な感染症対策をしながら,実験室実験を個別に実施した。参加者は病院実習を終えた看護学生で,アナグラム群,リーチング群,挿入課題がなく主課題のみを行う群のいずれか一つにランダムに割り当てられた。 分析の結果,主課題の正答率はリーチング群が87%でアナグラム群が71%で,挿入課題があると正答率は低いこと,および挿入課題の認知的な処理が高いと正答率は低いことが示された。すなわち,中断があると作業を再開する際に部分的な重複や抜けという不安全行動が生じ,それは中断時の認知負荷が高いと顕著であることが示された。また,挿入課題の認知的な処理が高いと重複や抜けのずれの程度が大きくなる可能性が示唆された。今後は,挿入課題が入るタイミングや挿入課題の所要時間,刺激単語の既知度について分析を行うことで,どのような環境で記憶錯誤から起こる不安全行動が生起しやすいかをさらに明らかにしていく。また,記憶方略の違いや再開時の確信度の観点からも分析を行いたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度途中から研究中断が生じたため,現在までの達成度はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は実験を実施し,中断により不安全行動が生起することと認知負荷が高い中断により不安全行動の生起率があがることが示された。今後は挿入課題の所要時間や再開時の確信度の観点からも当該実験で得たデータを分析し,不安全行動が生起しづらい環境要因の探究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度途中から研究中断が生じたため,次年度以降に使用が生じた。研究再開後に主に研究成果の発表の費用として使用することを計画している。
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