研究課題/領域番号 |
17K12995
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研究機関 | 独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 |
研究代表者 |
菅間 敦 独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所, リスク管理研究センター, 研究員 (80734201)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 人間工学 / バイオメカニクス / 姿勢安定性 / 操作力 / 作業姿勢 / 労働安全 / 認知心理学 |
研究実績の概要 |
本研究は、労働現場において高所作業中に転落する災害を防止するため、姿勢安定性と主観的な知覚・認知のギャップについて検証することを目的としている。作業中には手や工具で発揮した力が反作用により人体に作用する。その際、作業者が脚立や仮設足場などに立っていると、外力が人体を通じて用具にも作用するため、人体と足場双方のバランスを同時に保ちながら力を発揮する必要がある。発揮力に対する主観的な知覚や、転倒・転落の危険性に対する認知の正しさを評価し、現実の発揮力やリスクとの間にギャップがあるとすれば、その作業条件を明らかにすることが必要となる。 本年度は、はじめに狭い足場上での立位姿勢について、倒立振子モデルに基づいた姿勢安定性の評価を行い、荷物保持や上向き姿勢などの作業関連性因子が姿勢安定性指標に与える影響について評価した。その結果、足場幅が狭く作業が複雑になるほど身体動揺が非線形的に大きくなることが明らかとなり、姿勢安定性の指標として床反力作用点の位置及び速度の二つが適切であることを確認した。 この結果を踏まえ、体に外力が作用する場合の実験デザインについて検討した。外力の時間特性と予測可能性が姿勢安定性に影響すると考え、今年度は基本的な徒手による壁面等への水平押し作業を評価対象とした。検証実験は被験者11名を対象とし、立ち位置や作業点位置を変えた際の最大押し力と作業姿勢、主観的な発揮力の大きさを計測した。主観評定は、基準条件と比較しながら作業の前後で発揮力の大きさを予測するプロトコールにより記録し、心理量と物理量のべき乗則を仮定して分析した。実験結果より、力知覚は実際の発揮力との相関が高くなく、足関節にかかる発揮トルクなどの指標と相関が高いことが示された。また知覚量と発揮力の差として過大評価度を算出したところ、作業点高さが低い箇所ほど過小評価が大きくなる傾向が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
徒手による水平押し力の発揮において、立ち位置および作業点位置を変えて最大押し力変化を計測し、体重心と床反力作用点位置、作業姿勢などから姿勢安定性への影響について評価した。また、発揮力の知覚について主観評価に基づいて調査し、発揮力を説明する指標の選定と、条件ごとに過大評価度を算出した。上記のように、当初の計画通り進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
建設業等に用いられる複数の工具類を対象に、反動や反力の性質を明らかにする。具体的には、金づちの振り下ろし、釘打ち機などの反動工具、レンチ等によるボルト締結作業を対象とし、それぞれ外力信号について時間・周波数特性を評価する。その後、人体に対する影響を検討するため被験者実験を行い、操作姿勢等の運動学的データおよび体重心や床反力作用点などの安定性指標の動的特性を評価する。また外力の大きさや姿勢安定性への影響について作業の前後で主観調査を記録し、物理指標との関係を定量化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査等に係る旅費が不要となったため次年度使用額が生じた。平成30年度に当該年度旅費と合わせて使用予定である。
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