研究課題/領域番号 |
17K12996
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
津田 和城 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 主任研究員 (40359435)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 緩衝材 / 防振設計 / 緩衝設計 / 共振振動数 / 減衰比 / バネ定数 |
研究実績の概要 |
輸送中に製品にトラブルが起きない安全な物流社会を実現するために、多くの包装貨物で保護材として使用されている緩衝材の高機能化を目指している。本研究では、現在のような衝撃に対する緩衝機能に加えて、振動に対する防振機能を強化した緩衝材の作製指針の構築を最終目標としている。二年目である平成30年度は緩衝包装された製品に特有の共振現象発生メカニズムを解明するために、緩衝設計と防振設計の関係調査に取り組んだ。 緩衝設計と防振設計の関係を明らかにするために、緩衝設計の諸条件と防振設計に重要な共振振動数との関係を調査した。緩衝設計ごとに変化する緩衝材の剛性に着目し、製品の質量と緩衝材の剛性から緩衝材-製品系の共振振動数を算出して検討した。緩衝材には発泡ポリエチレン製緩衝材を試料として、その技術資料に記載されている最大加速度-静的応力線図と応力-ひずみ線図を用いて緩衝材の剛性を求めた。緩衝設計の諸条件として製品の質量と許容加速度、緩衝材の厚みと発泡倍率を変えたときの緩衝材の剛性から共振振動数を算出することにより、諸条件と共振振動数との関係を明らかにした。さらに、これらの関係から共振振動数が低振動数帯になる条件について考察することにより、緩衝包装された製品に特有の共振現象が発生する一因を見出した。 以上より諸条件と共振振動数との関係を明らかにした結果、緩衝設計で選択する静的応力や諸条件を変更することにより、包装設計者は一定の範囲内で共振振動数の調整が可能になった。これにより共振振動数を輸送振動の卓越振動数と一致させない対策が可能となり、製品に起きるトラブルの抑制につながる。最終年度である令和元年度には共振振動数の調整範囲を拡げて設計の自由度を拡大するために、緩衝材の表面改良による防振機能強化策を新たに考案したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、緩衝設計と防振設計の関係を理解するために、緩衝設計の諸条件と防振設計に重要な共振振動数の関係を明らかにすることができた。さらにこれらの関係から、包装製品特有の共振現象がみられる一因を見出すことができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は包装製品特有の共振現象発生メカニズムを解明するために、緩衝設計の諸条件と防振設計に重要な共振振動数との関係を明らかにした。次年度は緩衝材の表面改良として形状変化や異材積層を行い、防振性に及ぼす影響を明らかにする。これらにより得られた知見から緩衝材の防振機能強化策を考案する。一方で、国際会議での成果発表や論文投稿を行い、議論や意見交換を通して課題の抽出や解決策の検討を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
比較見積による価格競争や論文投稿の延期によって計画額と使用額に差額が生じたが、これらの差額は次年度の国際会議での成果発表や論文投稿などの費用に使用予定である。
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