研究課題
輸送中に製品にトラブルが起きない安全な物流社会を実現するために、本研究では、多くの包装貨物で保護材として使用されている緩衝材の高機能化を目指した。高機能化として緩衝性に加えて防振性の強化を図るために、一年目である平成29年度には一般に使用されているプラスチック系緩衝材の防振性を調査した。二年目である平成30年度には緩衝包装された製品特有の共振現象発生メカニズムを解明するために、緩衝設計と防振設計の関係調査を行った。最終年である令和元年度には防振性を強化した緩衝材の作製指針を構築するために、防振性の強化に役立つ包装貨物の共振周波数の調整方法を考案した。防振性の強化方法として、緩衝材の応力-ひずみ曲線の形状変更により包装貨物の共振周波数を上げ、荷台振動の卓越周波数帯との共振を回避する方法を提案した。具体的には、応力-ひずみ曲線の立ち上がりをさらに急峻な形状に変更することにより、共振周波数を上昇させる方法を提案した。さらに提案法のような応力-ひずみ曲線の形状変更が、共振周波数に加えて、緩衝性および防振性(落下時の最大加速度および加振時の加速度実効値)に及ぼす影響について解析した。その結果、形状変更により共振周波数は卓越周波数帯よりも高くなり、加振時の加速度実効値を小さくでき、なおかつ落下時の最大加速度にもほぼ影響を及ぼさないことがわかった。以上のことから、提案法により緩衝材を作製すれば、緩衝性を維持したまま防振性を強化できるため、高機能化を実現できると考えられる。これにより輸送中に加わる衝撃に加えて振動への対策が緩衝材で可能になるため、振動に起因したトラブルの低減に貢献できると考えられる。
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日本包装学会誌
巻: Vol.28, No.4 ページ: 211, 218