研究実績の概要 |
最終年度は、被害推定結果の評価と検証を主に行った。平成30年度の被害推定結果を統計的分析することで地域ごとの重要な被害・シナリオを求める. 具体的には平成30年度の計画で推定した多様シナリオからリスク分布を明らかにした. さらに各シナリオの尤度を計算することで地域(メッシュ) ごとにリスク分布を求め, 重要被害量(最大被害量,平均値以上の最尤被害量、最尤被害量) を推定する. 次に、地域ごとに求めた重要被害量からそれらを説明するシナリオをスパースモデリングから抽出する手法を確立した。また、仮想の被害結果を用いた実験によりある程度の精度を持ったシナリオ抽出が可能になり、その有効性を示すことも出来た。またその結果を国際誌へ投稿した。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果としては、まず、被害推定に必要な建物構造, 耐火性能, 築年代を建物単位で推定する手法の開発した。同時にGPS付帯の携帯電話プローブデータを用いて, 観測点間の各トリップの経路補間し、人口に合うように拡大係数(重み)を推定することで被害想定に適用可能な時間別の人流データ(人口分布) を開発した。これらを用いて様々な入力地震動・津波遡上シミュレーション結果に対して全国を対象に建物や人単位で倒壊・火災・津波の各事象を統合して物的・人的なリスクを詳細に推定することが可能になった。この多様シナリオに基づき各シナリオの尤度を計算することで地域ごとに被害尤度分布を求め, 重要被害量を推定し、それらを説明するシナリオをスパースモデリングから抽出する手法の確立をした。 被害分布から重要シナリオの抽出が可能になることは,時系列や入力津波データに由来する地域ごとに起こる固有の被害要因の理解を助長すると考えられる。
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