地震動即時予測の迅速性・信頼性を向上させるためには,ノイズが混入する恐れのある地震計などのデータも積極的に取り入れることで,活用可能な観測点数を増やしていくことが重要である.そのためには,そのような地震計の観測データから,地震波の情報を効果的かつ自動的に抽出する手法の開発が必要である. 本年度は,1年の研究期間の延長を行い,これまでに得られた教師なし学習による自動分類手法に関する研究成果を,国内学会や国際学会において発表した.また,手法の改良も実施し,最終的なクラス分類数をあらかじめ指定する必要のない階層的クラスタリングの導入を試みた.階層的クラスタリングによって得られるデンドログラムのカット高さを様々に変えることによって,ノイズを振幅レベルに応じて大まかに分類したり,高レベルノイズの中から鉄道ノイズなどの細かな特徴的ノイズを分離したりといった,連続波形記録のより柔軟なクラス分けが可能となった. 本研究課題では当初,地震やノイズの識別に必要な特徴量を調査しながら教師あり学習で連続波形記録の自動分類を行うことを目指していたが,より実用的な手法を開発するため,事前にラベル付きデータベースを用意する必要のない教師なし学習で波形分類を行う方針に転換した.周波数特性の類似性と時間的な近接性という特徴をうまく利用すれば,連続波形記録上の地震や特徴的ノイズは教師なし学習で分類することが可能であることを示すことができた.本研究で開発した手法は,新たな観測点を地震動即時予測に導入する際,予測精度に悪影響を及ぼすようなノイズがその観測点に混入しているかなどを判断するうえで重要な情報を与えるだろう.
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