研究課題/領域番号 |
17K13005
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
杉本 知史 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (60404240)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 斜面 / 遠隔モニタリング / 無線センサネットワーク / 雨水浸透 / 地下水 / 安定性評価 |
研究実績の概要 |
本研究では、人工的に盛り立てられた土砂地盤を対象として、降雨による地盤内の水の浸透と地下水位の変化を無線センサネットワークにより観測するためのシステムを構築し、継続的なデータ収集と分析を通して斜面変状の進行を定量的に明らかにするとともに、室内降雨浸透実験とこれに対応した数値解析による斜面変状の力学的考察を目的としている。本年度は、研究実施計画に沿って下記の点について研究に取り組んだ。 まず、前年度に計画を前倒しして行った特定の斜面地盤へ構築したワイヤレスセンサネットワーク(WSN)システムの安定運用と計測データの収集を行った。多くの植生や急勾配の地形による通信環境低下要因の対策、自立型電源の安定供給のための手法、親機子機間の通信のための中継機の配置の最適化など、実現場における種々の課題解決に取り組んだ。その結果、年間を通じて安定した計測データの収集を実現した。そのため、斜面表層の土壌水分率や斜面内の地下水位の変動と現地観測の降雨量との関係を明らかにするに至った。 これに加え、低価格の土壌水分計を用いた簡易水位計の開発も行った。斜面麓部においては、多雨時において地下水面が地表面付近に達する傾向にあることに着目し、複数のセンサを吊るした鋼製パイプを地面から3m程度埋め込む態様のものである。掘削機器等を用いずに簡易的かつ多点に設置することを可能とするものであり、次年度にわたり当該計器の実用性について検証を進める。 また、これらの計測データを根拠とする有限差分法による当該斜面のモデル化と力学的安定性評価のための数値シミュレーションも行った。その結果、降雨を伴う斜面の力学的安定性を評価するうえで、斜面上流側からの地下水流入量の影響が斜面表層からの浸透水と比べ大きいことが明らかとなり、現地観測データに基づく計算の実施の有用性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遠隔モニタリングのための無線センサネットワークシステムの構築については、安定運用に達するまで、センサや通信モジュールの耐候性、斜面地における通信品質の確保、太陽光発電による自立型電源の確保などにおいて諸課題が発生したが、いずれも事後の対策により解決を図ることができた。 当初、簡易センサの開発を計画の一部に挙げていたが、海外製の低価格のセンサの活用が本研究の円滑な遂行に資すると考え、土壌水分計、圧力計等についてはこの方針で研究を進めることとしている。
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今後の研究の推進方策 |
降雨に伴う崩壊の危険性が懸念される実際の斜面もしくは法面を有する原位置において,当該地の降雨量や日射量などの気象に関わるデータ取得とともに,地表面変位や表層の土壌水分率,地盤内の変位・土圧・間隙圧,地下水位などの変動を上記モジュールを用いて多点での計測を行う。原位置は,すでに従来型センサを使用した研究において計測を行っているサイトの他,熊本地震の被災地のサイトも予定している。計測センサから取得されるデータの取得状況が芳しくない場合は,その原因解明と対策を講ずることで計測システムの運用安定性の高度化を図る。また,1年を通した運用を行う中で長期的な原位置への実装の課題を抽出し,次段階への展開に繋げる。
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