研究課題/領域番号 |
17K13008
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
宇野 史睦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 産総研特別研究員 (60634946)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 降灰量観測 / 太陽光発電量 / 減少率 / 降灰予測モデル |
研究実績の概要 |
平成29年度の主要な項目は、火山灰降灰量推定モデルの開発である。そのために、鹿児島県大隅半島における5つの太陽光発電施設の発電所に、インターバルカメラを設置した。それぞれ、太陽電池モジュール上の降灰状況のモニタリングと降灰量簡易推定のための画像を5分間隔で平成29年8月より取得を開始し、現在も継続してデータ取得を継続中である。太陽電池上の降灰と、その降水による洗い流し、強風による火山灰の吹き飛ばし状況がインターバルカメラにより明瞭に見ることができた。これまで、1つの太陽電池モジュールに着目して表面の汚れの遷移を詳細に見た研究はほとんど無く、降灰による発電量低下率の評価と合わせて、その原因の調査においても有益な情報となる。 一方、インターバルカメラの画像を用いた降灰量簡易推定は、誤差が想定より大きく見込まれたため、別途、産業技術総合研究所に設置されている太陽電池モジュールにおいて、人為的に火山灰を堆積させその発電量低下率を評価させる実験を実施した。その結果、過去の降灰による発電量低下率と同程度であることがわかったため、降灰量推定モデル構築のための基礎データとして利用することとした。そのために、次年度も継続して様々な天候時に人為的な火山灰堆積実験を継続して実施することとする。 また、平成29年度は桜島だけでなく、霧島山も複数回噴火するなどしたため、上記の5つの太陽光発電施設において霧島山による降灰が観測されていればそちらについても同様に解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度の実施項目は、1、火山灰降灰量推定モデルの開発、2、降灰予測モデルの実施環境の整備である。 1のために鹿児島県大隅半島の5つの太陽光発電施設の発電に、2つのインターバルカメラを設置し(計10個)、それぞれ太陽電池モジュール上の降灰状況のモニタリングと降灰量簡易推定のための画像の取得を平成29年8月より開始した。桜島噴火時における上記5つの太陽光発電施設の発電量と日射量の関係を見たところ、いくつかの地点で降灰時に発電量が大きく低下していることが確認できた。しかし、降灰量簡易測定手法の精度が想定より低く、後輩量推定モデルの開発には不十分であったため、追加観測を実施した。追加観測は、既存の太陽電池モジュール上に人為的に火山灰を堆積させ、発電量低下率と降灰量の関係を見た。その結果、これまで鹿児島県霧島市で実施されてきた太陽電池モジュールと日射量の測定値から評価した降灰量と発電量低下率の関係に近い値が確認できた。 2のために、研究協力者2名の協力のもと、本年度における桜島噴火事例において、降灰予測実施のためのデータ等の整備を実施した。また降灰予測のデータ検証のための、降灰量観測データ(鹿児島県による観測)と本研究で実施している発電量と日射量データの整備が完了した。加えて、1の降灰量推定モデルの適用先である鹿児島県内の太陽光発電データの整備についても調査を開始した。 上述の通り、追加実験の実施が必要が生じたため、降灰量推定モデルの構築は平成29年度において完了していない。また、追加実験のための費用捻出のため国際学会における研究成果の発表も実施できなかったため、次年度において成果発表を実施予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、追加観測である人為的な降灰実験を産業技術総合研究所内で継続して実施し、その結果を用いて降灰量推定モデルを開発する。その後、複数の桜島噴火事例(平成29年度は霧島山も大規模噴火が発生しているため、霧島山も解析対象とする。)において、複数の噴火事例において気象庁が実施している降灰予測モデルを用いて降灰状況の過去再現実験を実施し、降灰量推定モデルを使用して評価した鹿児島県内の降灰量分布推定値と比較する。これにより、降灰予測モデルの精度について調査する予定である そのモデルの予測精度評価の中で、降灰量推定モデルの適用先である鹿児島県内の太陽光発電データについてもある機関から取得した商業施設などの屋上に設置されている太陽光発電のモニタリングデータを利用する予定である。しかし、想定以上にモニタリングデータの精度が低く、降灰量推定モデルが評価可能な最小単位が大きくなることが想定される。そのため、降灰量推定モデルによる推定誤差と太陽光発電の発電量データによる平均的な観測誤差をより精緻に評価し、降灰量推定モデルの適用可能な範囲を評価する必要がある。また、太陽光発電のモニタリングデータについては上記以外の機関が取得しているデータも合わせて利用可能性と観測精度・品質を評価する予定である。 平成29年度に桜島の火山灰の観測を実施している機関と情報交換を実施したため、今後も協力研究者以外とも密に情報交換をしながら進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由 購入を予定していた物品(インターバルカメラデータ保存用の外付けハードディスク)が想定より若干安かったため、若干の次年度使用額が生じた。 使用計画 観測測器のメンテナンス時により固定部材のさび止め等の購入に利用する。
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