研究課題
まず、北緯25度以北における台風発生の月別頻度分布を調べた。その結果、北緯25度以北での台風発生は7-11月に起こっており、8月が最も多いことがわかった。8月について、どのような年に北緯25度以北での台風発生が多いのか調べた。その結果、月平均の北西太平洋モンスーン指数が1標準偏差以上小さかった年に全体の41%の台風が発生している一方で、1標準偏差以上大きかった年には全体の5%の台風しか発生していなかった。このことはフィリピン東方での対流活動が不活発で、高気圧偏差である、いわゆる負のPJパターンが卓越するときに、北緯25度以北での台風発生が起こりやすいことを示している。このような大気場の変調を引き起こす要因として、北半球夏季季節内変動(BSISO)が考えられる。BSISO位相ごとの北緯25度以北での台風発生確率と北太平洋域全域での発生確率を比べると、フィリピン付近で対流活動が活発である位相6-7の時に北緯25度以北での台風発生確率が低くなり位相8-1の時に北緯25度以北での台風発生確率が高くなっていることがわかった。さらに台風発生時点での発生位置を中心とする10度四方で平均した海面水温、鉛直シアー、相対渦尾、中層の湿度の偏差を北緯25度以北での台風と北太平洋域すべての台風とで比較した結果、北緯25度以北での台風発生では中層の湿度偏差が大きいことがわかった。関連研究について情報収集・議論を行うため、日本地球惑星科学連合、米国物理学連合合同大会において「台風」セッションを研究代表者がメインコンビーナ-となり、国際セッションとして開催した(2017/5/21 於:幕張メッセ)。また、シームレス台風予測研究会(2017/11/10 於:海洋研究開発機構東京事務所)を主催した。なおBSISOの解析に当たってハワイ大学国際太平洋研究センターの菊地博士と国際共同研究を行った。
2: おおむね順調に進展している
研究実績に記載の通り、当初の計画通り進んでおり、得られた研究成果は国内外の学会で発表を行った。現在論文発表を準備中である。また、平成30年度に実施する予定のTIGGEデータ解析のために、解析用のPCとディスクを購入し、データのダウンロードが計画通り順調に進捗している。
得られた解析結果によると、比較的時間スケールの長いフィリピン付近の対流活動の変動を予測できれば、北緯25度以北での台風発生を精度よく予測できる可能性がある。平成30年度は各国の現業モデルモデルにおける、フィリピン付近の対流活動の予測可能性をTIGGEデータを用いて、定量化する。また、様々なモデルの予測の組み合わせにより、北緯25度以北での台風発生予測の高精度化が可能かどうか検討を進める。所属機関の人材育成制度により、平成30年度11月より、研究代表者がTIGGEデータの公開元である欧州中期予報センターへ派遣されることとなった。このためさらなる国際共同研究の発展も視野に研究活動を進めていく予定である。
論文投稿料と英文校閲料として使うことを予定していたが、論文の執筆が若干遅れているため、平成30年度に繰り越して使用する予定である。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
Monthly Weather Review
巻: 145 ページ: 3143~3159
10.1175/MWR-D-16-0208.1
Journal of Climate
巻: 30 ページ: 9703~9724
10.1175/JCLI-D-17-0068.1