交感神経活動がインスリン非依存的に末梢の糖取り込みを亢進することに着想を得て、本研究を含む一連の研究では、末梢交感神経系を介した人工的なエネルギー代謝制御法の確立に挑戦する。 今年度は、昨年度及び一昨年度遂行した末梢交感神経電気刺激の実験を継続し、高脂肪食飼育によってインスリン抵抗性を亢進したラットへの末梢交感神経電気刺激が糖取り込み量に及ぼす影響を定量的に検討した。また、末梢交感神経活動の糖代謝制御メカニズム解明の一環で、腎臓でのグルコース再吸収を担うSGLT2を阻害してグルコース排泄を促進したときの、末梢交感神経活動と糖取り込み機能との関連性についても、高脂肪食ラットを用いて検討した。 高脂肪食ラットへ糖取り込み量の定量的検討に一般的に用いられるeuglycemic clamp法を適用し、グルコース注入速度(GIR)を算出しながら末梢交感神経電気刺激を行った結果、高脂肪食ラットのGIRは健常ラットのそれよりも有意に低値であり、末梢交感神経電気刺激は、統計学的に有意ではないものの刺激開始前に対してGIRを上昇させる傾向にあった。このとき、血漿インスリン濃度に大きな変化はみられなかった。また、SGLT2の阻害は、高脂肪食ラット静脈内への単回グルコース負荷後、末梢交感神経活動を有意に低下させた。 以上の結果から、末梢交感神経電気刺激はインスリン抵抗性を有する高脂肪食ラットの糖取り込みをインスリン非依存的に亢進する可能性が示唆されたとともに、高脂肪食ラットにおけるSGLT2の阻害は、交感神経活動を介した急性期の糖取り込みに対して抑制性に作用する可能性が示唆された。
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