研究課題
高齢者の多くが抱える悩みとして関節軟骨の変性や損傷に伴う膝の痛みは、国内のみならず世界的にも根本的な解決法の望まれる問題である。関節軟骨は自然治癒の得られにくい組織であることが知られているが、近年の再生医療の発展に伴い、軟骨組織の再生に対しても強い期待が寄せられている。 本研究では関節軟骨損傷に対する運動を含む物理的な刺激が中・長期的に、損傷した関節軟骨の修復にどのように影響を及ぼすのかを明らかにすることを目的とした研究である。8週齢のWistarラット膝関節に対して軟骨欠損処置を行った後、4週間通常ケージにて飼育したChronical Osteochondral defect(OCD)ラットを対象とした。OCDラットを無作為に3群に分け、通常飼育を行った荷重群、尾部懸垂にて後肢への免荷を行った免荷群、トレッドミル強制走行を中等度強度にて負荷した運動群の3群に分けてそれぞれ4週間介入した。介入期間後、介入の中・長期的な影響を調べるため、各群のラットは通常ケージにて飼育した。12週および16週後、ラットを安楽死させ、膝関節を摘出し組織染色を行った。得られた組織を光学顕微鏡にて観察し、軟骨修復スコアにて評価を行い、統計学的に解析を行った。12週後、荷重群の軟骨修復スコアは運動群に比べ有意に改善していた。しかし、16週経過後で各群を比較すると有意な差は見られなくなっていた。ただし、荷重群と運動群でより修復の悪いサンプルが見られた。このことから、軟骨欠損処置を施したラットの膝関節が修復される過程において、初期の時期における過剰な物理的負荷は中期的には修復を妨げうる要因となるが、初期に免荷することによりが長期的には修復不良となりにくいことが示唆された。
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BMC Research Notes
巻: 12 ページ: 733
10.1186/s13104-019-4766-2