研究課題/領域番号 |
17K13022
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
松橋 祐輝 早稲田大学, 理工学術院, 助手 (50754777)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 医療技術評価 / 医療機器 / 血栓形成 / 粒子画像流速計測法 |
研究実績の概要 |
心臓外科術時に使用する人工心肺回路や補助人工心臓といった,血液と直接接触する医療機器は患者の治療に大きく貢献している.しかし,送脱血に用いるコネクタとチューブの接続部といった段差部には血栓が形成され易く,形成された血栓が飛散することで脳梗塞関連の合併症を引き起こす可能性がある.研究代表者は,コネクタとチューブの接続部に形成される血栓を光干渉断層装置(OCT)を用いて,血液循環中に非侵襲に可視化する手法を開発した.本研究では,異なる形状のコネクタ端部とチューブとの接続部における血栓の形成過程を可視化し,粒子画像流速計測法により可視化した流れ場と比較し,(a) 血栓の形成と成長に影響を及ぼす流体力学的因子の明確化,(b) 血栓の形成,成長,飛散を抑制するコネクタの設計指針の明確化を目的とし研究を推進している.初年度には,(1) OCTを用いた全血下での複数の形状の異なる段差における血栓形成過程観察手法を用いた血栓の形成,成長と飛散への影響の実験的検証と(2) 粒子画像流速計測法を用いて可視化した血液の流れと血栓の経時的形成過程を比較検討し,血栓形成と成長に及ぼす流体力学的因子の抽出を実施した.まず,コネクタは内径6 mm,外径8 mmで先端の段差が1 mmのテーパ無コネクタと同一径で先端に30 °のテーパ加工を施し,先端の段差が約100 μmのテーパ有コネクタの2種類のコネクタを対象として血栓形成過程の可視化実験を実施した.その結果,コネクタ端面のテーパ有無によらず血栓は形成されが,その成長具合に関してはコネクタ先端の段差形状が影響を及ぼすことがわかった.さらに,2種類のコネクタのチューブとの接続部の局所的な流れ場を可視化した結果,流れの剥離領域は血栓の成長に影響を及ぼし,流れの再付着点は血栓の成長を抑制することがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度には(1) OCTを用いた全血下での複数の形状の異なる段差における血栓形成過程観察手法を用いた血栓の形成,成長と飛散への影響の実験的検証と(2) 血栓形成に影響を及ぼす因子の流体力学的因子の抽出を実施した.その結果,コネクタの先端形状が血栓の形成と成長に影響を及ぼすこと,コネクタとチューブの接続部の局所的な流れ場が影響するということを明らかにすることができた.特に,流れの剥離域と流れの再付着点に注目するという設計指針を得ることができた.このことから,2年目に予定している(3)流れ場を制御した血栓の形成と成長あるいは飛散を抑制するデザインの提案と検証に円滑に着手できることから本研究は当初の計画以上に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究において,コネクタ端面のテーパ有無によらず血栓は形成されが,その成長具合に関してはコネクタ先端の段差形状が影響を及ぼすことがわかった.さらに,2種類のコネクタのチューブとの接続部の局所的な流れ場を可視化した結果,流れの剥離領域は血栓の成長に影響を及ぼし,流れの再付着点は血栓の成長を抑制することがわかった.2年目には(3)流れ場を制御した血栓の形成と成長あるいは飛散を抑制するデザインの提案と検証を実施する.具体的には(3-1) 血栓の形成,成長,飛散と安定化に影響を及ぼす流体力学的因子の抽出,(3-2) 抽出した流体力学的因子を制御し,血栓形成や飛散を抑制し,形成された血栓を安定的に定着化し得る設計指針の取得,(3-3) リアルタイム血栓可視化手法を用いた,新設計したコネクタの有効性の実証実験を行う.これらの研究を通して,流れ場を制御した血栓の形成と成長あるいは飛散を抑制し,血栓の安定的な定着化を図る設計指針の提案を行う.なお,血栓形成の抑制だけでなく,飛散を抑制,形成された血栓を安定的に定着化するという視点から検討を行う.コネクタの形状の最適化だけで血栓形成の抑制や安定な定着化が得られない場合には,表面粗さや材料の検討も行い,総合的に設計して研究を進める.
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