Extracorporeal membrane oxygenationや持続的血液濾過器などの血液と接触する医療機器は患者の治療に大きく貢献している。しかし、回路内のコネクタとチューブの接続部といった段差部には血栓が形成され易く、形成された血栓が飛散することで脳梗塞関連等の合併症を引き起こす可能性がある。本研究では、光干渉断層装置を用いて非侵襲に血栓を可視化する新たに開発した技術を用いて、異なる先端形状を有するコネクタの先端部とチューブとの接続部における血栓形成過程を可視化する。そして、粒子画像流速計測法を用いた流れの可視化結果と比較検討することにより血栓の形成、成長と飛散に影響を及ぼす流体力学的因子を抽出し、血栓の形成、成長あるいは飛散を抑制するコネクタの設計指針を明確化することを目的としている。脈動流下での先端形状の異なる2種類のコネクタとチューブとの接続部位に形成される血栓の形成と成長を光干渉断層装置を用いて経時的に観察しコネクタとチューブ接続部の段差部に形成される血栓の長さと高さを計測することで血栓の成長を定量的に分析した。また、同一の実験系を用いて流れ場の可視化を行い、血栓形成の可視化結果と比較検討した。その結果、コネクタ先端の形状や流入部、流出部に関係なくコネクタとチューブとの接続部位に血栓が血液循環10分で形成されることが明らかとなった。また、血栓はコネクタとチューブ接続部における低流速領域に形成され、コネクタ段差部ではコネクタ先端部の向きと血流の方向が血栓の成長に影響を及ぼすことを明らかにした。さらに、コネクタ流出部では拡大管流れの影響による流れの再付着点が血栓の成長を抑制することがわかった。本研究で得られた知見を基礎として、より詳細に血栓形成に影響を及ぼす流体力学的因子分析することで血栓形成,成長と飛散を抑制するコネクタと設計指針の取得できると考えられた。
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