バスキュラーアクセスカテーテル(以下カテーテル)は,様々な問題点を改善するために改良が重ねられている。例えば,カテーテルの抵抗を減少させるために径を太くしたり,血栓形成によるトラブルに対して抗血栓性薬剤をコーティングして改善している。治療中にカテーテルが血管壁を吸引するトラブルを起こす。よって、我々はカテーテルを回転することが有効であることを報告した。さらに、カテーテルの先端部分の構造の違いがカテーテルの血管壁吸引に影響を及ぼしやすいことが分かったため、カテーテルの先端部分の横に穴を開けてカテーテルを改良した。その結果、側孔に開けた穴が複数であることや開口部がねじれているカテーテルが血管壁の吸引が発生しにくいことが分かった。 新たな知見として、血液浄化用装置を用いて取り組みを開始した。血液浄化装置側を改良することで、カテーテルが血管壁を吸引することを改善するための検討を行った。カテーテルの脱血孔が血管壁を吸引した際、安全機構で血液ポンプが停止するように設計されている。しかし、血液回路内の陰圧を検出してから血液ポンプが停止するため、血液回路内圧が過剰なほど陰圧を呈する。回路内の過剰な陰圧が継続すると血管壁の吸引の改善を阻害するだけでなく、血液凝固などを呈することから速やかに改善する必要がある。本研究では、血管壁の吸引が発生した直後なるべく早い時間で血液ポンプを停止し、緩徐に血液ポンプを再稼働(5mL/min/sずつ)させることで、回路内圧を過剰な陰圧にせず血流量を維持できることに一定の見解を得た。今後は、血液浄化装置に組み込めるような条件設定を検討していく予定である。 本研究は、2020AKI&CRRT国際学会において研究実績を報告した。2020年に日本透析医会研究助成を受けた。
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