研究課題/領域番号 |
17K13025
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
大和 正典 国立研究開発法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, 研究員 (50565778)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 近赤外レーザー / エネルギー代謝 / 脳内神経炎症 / メタボローム解析 |
研究実績の概要 |
本研究は、TCAサイクル中のアコニターゼ活性を阻害するモノフルオロ酢酸を投与してエネルギー代謝の低下、それに伴う脳内神経炎症を引き起こしたラットに対し、生体透過性に優れ、エネルギー代謝調節効果および抗炎症作用を示す近赤外レーザーを体外から頭部へ照射することにより新たな脳内神経炎症抑制法の確立、さらに近赤外レーザーの作用メカニズムの解明を目指すものである。 モノフルオロ酢酸を投与し、エネルギー代謝を低下、それに伴う脳内神経炎症を引き起こしたラット、およびPoly I:Cを投与し脳内神経炎症を引き起こしたラットの大脳皮質について、メタボローム解析を実施した。これまでにモノフルオロ酢酸を投与した動物の脳内においてエネルギー代謝に直接関連する代謝物が変動することを明らかにしていたが、アルギニン、オルニチン、シトルリンなど、肝臓において尿素サイクルに関連する物質が両動物モデルの脳内で上昇していること、GABAやグリシンなどの代謝物は低下していることが新たに明らかとなってきた。 また、それらのモデル動物に対し、体外から脳へ近赤外レーザーを照射し24、48時間後の炎症性サイトカインの発現をquantitative RT-PCRにより測定した。モノフルオロ酢酸を投与した動物では投与24時間、48時間後で大脳皮質、海馬、線条体において炎症性サイトカインのmRNAが上昇することをこれまでに確認している。近赤外レーザーを体外から頭部へ照射を行うと、炎症性サイトカイン発現の上昇はやや抑えられる傾向が見られたものの、より高い効果を得るために照射条件の改善を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モノフルオロ酢酸投与とpoly I:C投与の複数の動物の脳内メタボローム解析を行うことによって共通の変化が起こる代謝物などについても明らかになってきている。また、近赤外レーザーの脳への照射についても予定通りモデル動物を用いて遂行し、データが得られてきている。今のところ、頭部皮膚表面で10mWとなるようレーザーのパワーを調整し、照射を行なっているが、抗炎症作用に関して有意な差を得るには至っていないため、計画書の通り照射時間、照射回数を増やすなどすることにより効果を比較し、より最適な照射条件を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
脳のメタボローム解析の結果、さまざまな代謝物が変動していることが確認された。現在レーザーの照射条件の改善を行なっているが、条件が決まり次第メタボローム解析を進める予定である。30年度より培養細胞の実験を併せて行なっていく予定であり、近赤外レーザーのエネルギー代謝への作用、炎症に関連するシグナル伝達への影響など、詳細な検討を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験の進行は概ね順調であったが、より効果的な近赤外レーザーの照射のための条件検討などのため、レーザー装置や測定機器を用いた基礎検討にも時間を要した。そのため、一部動物実験および生化学実験、メタボローム解析に関する消耗品購入のための費用を次年度使用として請求する。
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