研究課題/領域番号 |
17K13025
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
大和 正典 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (50565778)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 近赤外光 / 脳内神経炎症 / エネルギー代謝 |
研究実績の概要 |
本研究は、TCAサイクル中のアコニターゼ活性を阻害するモノフルオロ酢酸を投与してエネルギー代謝の低下、それに伴う脳内神経炎症を引き起こしたラットや、合成2本鎖RNAであるPoly I:Cを投与することにより作成される脳内神経炎症モデルラットに対し、生体透過性に優れ、エネルギー代謝調節効果および抗炎症作用が期待される近赤外レーザーを体外から頭部へ照射することにより現行の薬剤では困難である脳内神経炎症を抑制する新たな方法として確立し、さらに培養細胞系も用いて近赤外レーザーの作用メカニズムの解明を目指すものである。これまでに上記動物モデルの大脳皮質では、両モデルに共通してエネルギー代謝に直接関連する代謝物が変動すること、アルギニン、オルニチン、シトルリンなどの肝臓において尿素サイクルに関連するような物質も上昇していること、一方でGABAやグルタミン酸などの神経伝達に関連する代謝物は低下していることなどをメタボローム解析を行うことにより明らかにしてきた。また、これら動物モデルに対する近赤外レーザーの照射により、炎症性サイトカインの発現が軽減されることがわかってきた。ヒトの骨髄由来THP-1細胞を用いた検討では、昨年度から引き続きM0マクロファージからLPS刺激によるM1マクロファージへの分化や炎症反応に関連するNF-kB活性等に対して近赤外レーザー照射がどのような影響を及ぼすかどうかについて解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モノフルオロ酢酸やPoly I:Cを投与することにより作成される脳内神経炎症モデル動物に対し、近赤外レーザーを照射することにより、炎症が軽減されることを見出した。ヒトの骨髄由来THP-1細胞をTPAでM0マクロファージに分化させ、メディウム中にLPSを添加することによるM1マクロファージへの分化や炎症に関連するシグナル伝達に対し、近赤外レーザーの照射がどのような影響を与えるか検討を行っており、回収した細胞のNF-kB活性の変化の解析などを合わせて行っている。アストロサイトもしくはアストロサイト・ニューロンの混合培養細胞を用いた実験は次年度に持ち越し行う予定であるが、マクロファージの分化など、当初の予定よりも幅広くレーザーの影響を検証しているため、概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続きマクロファージの分化や炎症に対する近赤外レーザーの影響を調べつつ、アストロサイト・ニューロンの混合培養細胞を用いた実験を行う。モノフルオロ酢酸によるエネルギー代謝の低下に対する近赤外レーザーの影響をメタボローム解析などを行い、モデル動物のメタボローム解析の結果と合わせながら代謝調節と炎症に対する影響を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の進行は概ね順調であったが、いくつかの培養細胞系の購入を次年度に持ち越したため、それに関連する消耗品や解析の外注の費用を次年度使用として請求する。
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