本研究は、TCAサイクル中のアコニターゼ活性を阻害するモノフルオロ酢酸を投与してエネルギー代謝の低下、それに伴う脳内神経炎症を引き起こしたラット や、合成2本鎖RNAであるPoly I:Cを投与することにより作成される脳内神経炎症モデルラットに対し、生体透過性に優れ、エネルギー代謝調節効果および抗炎症 作用が期待される近赤外レーザーを体外から頭部へ照射することにより現行の薬剤では困難である脳内神経炎症を抑制する新たな方法として確立し、さらに培養細胞系も用いて近赤外レーザーの作用メカニズムの解明を目指すものである。これまでに上記動物モデルの大脳皮質では、両モデルに共通してエネルギー代謝に 直接関連する代謝物が変動すること、アルギニン、オルニチン、シトルリンなどの肝臓において尿素サイクルに関連するような物質も上昇していること、一方で GABAやグルタミン酸などの神経伝達に関連する代謝物は低下していることなどをメタボローム解析を行うことにより明らかにしてきた。また、これら動物モデルに対する近赤外レーザーの照射により、炎症性サイトカインの発現が軽減されることがわかってきた。さらに、ヒトの骨髄由来THP-1細胞を用いた検討では、近赤外レーザーまたは大気圧プラズマの細胞への直接照射を行うことにより炎症や分化増殖に対して大きな影響を及ぼすことがわかってきた。現在それらの変化を網羅的に捉えるためのオミックス解析をを行っており、進行中である。
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