組織再生を目的とした細胞移植では、移植細胞の生着率が低いことが大きな問題となっている。ヒトや動物の組織から免疫原となる細胞を取り除いた脱細胞化生体組織は、様々な細胞外マトリックスで構成される材料である。脱細胞化生体組織は原料組織により機能が異なることが明らかにされており、本研究グループでも創傷治癒や血管新生を誘導する脱細胞化生体組織を報告している。 本研究課題は、生体内の任意の部位に血管新生と創傷治癒を誘導する脱細胞化生体組織加工材料を作製し、移植細胞の生着率を向上させる材料開発の基盤確立を目的としている。 2019年度は、種々の生体組織を原料とする脱細胞化生体組織加工材料の原料特異的機能を細胞試験と動物試験で評価した。筋芽細胞分化試験において、脱細胞化骨格筋添加により筋管形成が促進される可能性が明らかにされた。また、骨芽細胞様細胞への脱細胞化軟骨・骨添加により、石灰化が促進されることが確認された。脂肪由来幹細胞と脱細胞化生体組織加工材料のラット皮下埋植試験において、細胞単独移植群と比べ、脱細胞化生体組織加工材料混合群(肝臓・骨格筋)において細胞生着率が高くなることが示唆された。加えて、脱細胞化生体組織加工材料内部に新生血管が浸潤していることが認められた。 以上から、「脱細胞化生体組織の原料組織種により細胞の分化誘導における機能差があること」、「脱細胞化生体組織加工材料による移植細胞生着率の向上の可能性」を見出した。
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