細胞が分泌するナノメートルサイズの小胞であるエクソソームはタンパク質や核酸などの機能性分子を細胞から細胞へと運び情報伝達を行う重要な役割を果たしている。エクソソームに特有のタンパク質やゲノムの解析が盛んに行われており、疾患特異的なバイオマーカーや医薬品としての応用が期待されているが、細胞への取り込み機構や分離技術など未だ多くの課題が残されている。細胞膜表面にあるタンパク質や脂質のほとんどは糖鎖で覆われており、分化、免疫、感染、がん化などの生体応答に重要な役割を示している。エクソソーム表面にも糖鎖が存在するが、解析手法が難しいことからエクソソームの糖鎖研究はほとんど進んでいないのが現状である。そこで、本研究ではレクチンマイクロアレイを用いてエクソソームの表面糖鎖の網羅的な解析を行い、細胞の種類やエクソソームのサイズ、細胞分化前後での糖鎖パターンを比較し、エクソソームの構造多様性を分類する指標となり得るかどうかを検討した。 がん細胞、未分化および分化(骨芽、脂肪、神経)間葉系幹細胞から超遠心法によりエクソソームを回収した。糖鎖解析にはエバネッセント波を用いた蛍光励起検出法によるレクチンマイクロアレイを用いることで、エクソソームの構造を壊すことなく高感度でリアルタイムの検出を可能とした。エクソソーム表面糖鎖のパターンは①細胞の種類(正常とがん、未分化と分化)、②エクソソームのサイズ(低速遠心で得られるサイズの大きな粒子)、③回収法の違い(超遠心法と市販の回収キット)でそれぞれ変化が見られた。これらの結果より、エクソソーム表面糖鎖は新たな疾患や分化マーカー、さらには分離技術への応用可能であることが示唆された。
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