本邦における死亡原因1位のがんは、多くの治療法が存在するものの、未だ根治不能な疾患であり、新たな概念に基づく治療法の開発が急務となっている。本観点から、がん細胞特異的な免疫活性を高めるがんワクチンの開発が期待され続けてきたものの、長年に渡る研究にも関わらず、がんワクチンは、臨床において十分な成果を挙げられていない。その点、申請者はこれまで、樹状細胞選択的に結合するだけでなくアジュバント活性をも有する機能性ペプチド(樹状細胞標的化ペプチド)の同定に成功しており、本ペプチドの最適設計により、「機能性ペプチドによるがんワクチン」を開発し得る知見を得ている。本申請研究では、本樹状細胞標的化ペプチドを、構造活性相関解析により最適化したうえで、がんワクチンへの展開を図ることを目的とした。特に、7アミノ酸からなる本樹状細胞標的化ペプチドを鋳型に、個々のアミノ酸を異なるアミノ酸に置換した約20種類のペプチド誘導体を合成し、樹状細胞への結合特性およびがんワクチン効果を評価することで、構造活性相関情報の取得を図った。その結果、ペプチド誘導体の1種類について、野生型ペプチドよりも有意に強くがんワクチン効果を発揮可能であることが明らかとなった。一方で、他の誘導体については、がんワクチン効果が維持されるものもあれば、消失するものも存在した。以上の結果から、本ペプチドによるがんワクチン効果に重要なアミノ酸配列が見出されただけでなく、本ペプチドよりも効果の強いペプチド誘導体を取得できた。以上のように本研究では、平成29年度に予定した検討の全てを実施することはできなかったものの、予定した取り組みの1/3程度の成果を得ることができ、かつ、興味深い知見を得たと考えている。
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