研究課題/領域番号 |
17K13032
|
研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
鈴木 亮佑 神戸学院大学, 薬学部, 講師 (80611540)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 薬物送達システム / 薬物ナノキャリア / 脂質-高分子複合ナノ粒子 / がん / マイクロ流体デバイス / マイクロリアクタ |
研究実績の概要 |
本申請研究は、がん集積性の向上と大きな間隙をもたないがん血管の透過を目的として、ナノ粒子表面上へ配置した高アルブミン結合性化合物に血管内で内因性アルブミンをリクルートさせ、その血管内皮細胞透過性・がん細胞による取り込み能を有効活用する新規がん標的化戦略を創出する。本戦略は、大きな間隙をもたないがん血管が障壁となっていた微小な原発巣や転移巣への効率的な送達の実現に大きく貢献する。 本研究計画は3年間からなり、1. 標的化能向上のための組成最適化、2. がん細胞におけるアルブミン取り込み機構の解明、3. アルブミンを取り込まないがん細胞への本戦略の有効化を各年度の目標とした。当該計画は連続的ナノ粒子合成が可能なマイクリアクタの使用を前提とする。しかし、前年度に開発した脂質-高分子複合ナノ粒子 (LPN)は高分子の親水性による乏しい薬物保持性が問題だった。より疎水性の高い高分子はこの問題の解決が期待される一方、開発したマイクロリアクタでは著しい粒子径の増大が新たな障害となっていた。 そこで、平成30年度はマイクロリアクタ流路の再設計によって薬物保持性を向上させた30 nm程度のLPNの構築に取り組んだ。再設計にあたり、2液の合流から混合開始までの流路を最小限に短縮させ、合流部をY字型または十字型とした。従来型マイクロリアクタと比較して、新型はいずれも粒子径を30 nm近く減少させた。より分子量が大きく疎水性の高い高分子を用いることで粒子径を40 nm程度にまで減少させることに成功した。さらに、上述の結果はすでに報告されている他のどのマイクロリアクタよりも混合性能に優れていた。高い薬物保持性をもつ超極小薬物ナノキャリアは細胞内動態的観点から血管内皮細胞透過性を向上させる上で極めて重要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前被採択課題「がん低酸素領域を送達範囲内に収める難水溶性薬物搭載粒子径可変ナノキャリアの開発」(課題番号15K21534)の研究期間を実施状況の遅れから 1年間延長していた。さらに、従来型マイクロリアクタ開発における有機溶媒除去条件の最適化、新型マイクロリアクタ開発におけるトラブル対処がさらなる遅れの原因となった。また、前被採択課題から全てを申請者単独で実施せざるを得ない状況が上述した遅れの一因ともなっていた。
|
今後の研究の推進方策 |
新型マイクロリアクタは従来と同等の粒子径と薬物保持性の向上を両立したLPNの構築に有用であることを実証する。新型マイクロリアクタが世界最高レベルの混合性能をもつ可能性が高いことを考慮すると、この実証は実施に値するものである。現在はLPNが1粒子ずつ分離した状態となる調製条件・処方を検討している。本検討が終了し次第、in vitro細胞毒性、薬物放出プロファイルおよび薬物保持性を評価する。また、ナノ粒子表面へのアルブミンのリクルートについても、より安価かつ効率的に実施できる戦略を採用し遅れを取り戻す。当該戦略は文献検索より既に見出している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が10,000円を下回っていたため、当該交付金が基金であることを考慮し次年度使用への繰り越しが予算執行の上で適当と判断した。当該次年度使用額は物品費購入に充てる。
|