我々は、ロボット支援下腎部分切除術(RALPN)において、腫瘍の位置推定のため、術前CT画像から作成した3Dモデルをリアルタイムに術中3D画像に投影する技術を開発した。さらに3Dモデルを自動重畳および自動追従するシステムの開発、臓器の変形に対応する変形モデルの開発を行ってきた。 2018年度にORB-SLAM2という特徴点ベースのSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術を使用してカメラ映像のみでカメラの3次元位置・姿勢を求めるプログラムと、3Dモデルをカメラ映像に重畳させるプログラムの両立に取り組んできた。術動画を用いた実験では、カメラの移動速度が緩やかで、腹腔内に大きな変形が無い状況であれば、鉗子などの手術器具が写り込んでいたり、内視鏡カメラに部分的に液体が付着していても SLAM によりカメラ位置姿勢計測は可能であった。2019年度は実際にロボット支援手術の術中にリアルタイムにSLAMを起動させ、より精度の高い自動追従機能を確認することができた。さらにTileproで術者が自由にARナビゲーション画像を術中に確認できるようになり、より実用性の高いシステム構築を達成できた。 今後はさらなる自動重畳技術の開発、SLAMの精度向上に向けて研究を継続し、臨床的に有用なda Vinci Xi Surgical systemのナビゲーションシステムの実装とその実用化を目指す予定である。
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