研究実績の概要 |
研究の目的: Sodium glucose cotransporter 2 (SGLT2) 阻害薬が,心不全を中心とした心血管イベントを抑制する効果があることが近年注目されているが、そのメカニズムは未だ明らかでない.申請者は,そのメカニズムの可能性の1つとされている,心外膜下脂肪組織(EAT)から分泌される炎症性サイトカインによる心筋障害に着目した.SGLT2阻害薬投与によってEATが軽減することで心機能が改善するという仮説を立て,SGLT2阻害薬投与によるEAT厚の変化と,心機能指標との関連について検討することを目的として本研究を立案した. 研究実施計画と成果:SGLT2阻害薬を新規に投与した2型糖尿病患者で,投与前・投与半年後に心エコー図検査,EAT厚を含む脂肪測定および体組成量を記録できたのは22例(平均年齢62±14歳,男性10例)であった.EAT厚の10%以上の軽減を臨床的効果ありと定義した.EAT厚は,SGLT2阻害薬投与前と比較して投与半年後に有意に低下し(8.9±2.9 vs. 7.3±2.6 mm, p<0.01),16例(73%)で10%以上の軽減を認めた.心エコー図指標では,E/e’の低下を認めた(11.1±6.3 vs. 9.2±4.3 cm/s, p=0.013).EAT厚が10%以上軽減している患者では,軽減していなかった患者と比べてE/e’が低下する傾向が強かった.また,スペックルトラッキング法を用いた左房ストレイン値は,EAT厚が軽減した群で改善する傾向があった.これらのことから,SGLT2阻害薬によるEATの軽減が,心機能障害指標であるE/e'や左房ストレイン値の改善と関連することが示唆された.
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