研究課題/領域番号 |
17K13039
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
加藤 茂樹 近畿大学, 医学部, 助教 (90790767)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 超音波 / ドラッグデリバリー / 腫瘍免疫 |
研究実績の概要 |
がん死の原因はその9割以上が転移によるものである.リンパ管とその経路上に位置するリンパ節はがんの主な転移経路であり,効果的なリンパ節転移治療ががん治療成績の向上に直結する.従来の転移リンパ節治療法は,侵襲性,組織特異性,安全性,費用対効果の面で課題があった.本研究は,リンパ行性薬剤投与と超音波により,リンパ球へ遺伝子を導入し,転移リンパ節に対する新たな腫瘍免疫療法開発に展開することを目的とする. 超音波をはじめとする物理的な外来分子導入方法の問題点は,導入効率の低さである.そこで超音波強度と薬剤の導入効率を最適化する必要がある. はじめに超音波照射域の音場特性の可視化をおこない,入力実効電圧に対する超音波強度を測定し,超音波照射域の音圧分布を求めた.超音波強度は,ニードル型ハイドロフォンを使用して計測し,実測値と理論値が一致することを確かめた.次に,蛍光分子(TOTO-3)とナノ・マイクロバブル(平均粒径:約200nm)の混合溶液をリンパ管へ注射し,下流のリンパ節へ送達した.送達した段階で,外部から超音波を照射した.超音波照射したリンパ節は摘出して凍結切片にし,蛍光免疫染色をおこなった.顕微鏡により蛍光画像を取得し,超音波強度の違いによるTOTO-3蛍光強度を定量化した.その結果,TOTO-3はリンパ管内皮近傍のリンパ球に導入されており,超音波強度依存的にTOTO-3蛍光強度が増大し,導入効率の増大が認められた.このとき,最も高い超音波強度でも組織侵襲は認められなかった.これは本手法が低侵襲でリンパ球へ遺伝子導入を実現できる可能性を示唆するものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
超音波強度による最適化だけではなく,遺伝子などの分子量が大きい物質に対する導入効率の最適化が必要になると考えられる. 適切な腫瘍リンパ節転移モデル作製には,転移における免疫応答の正確な理解が必要になると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子などの分子量の大きい分子の導入効率の最適化をおこなう.腫瘍と免疫応答の正確な理解により,リンパネットワークを介した適切な腫瘍転移誘導を実現する.
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の物品が在庫物品で代替可能であったため購入を見送った. 次年度は,フローサイトメトリー抗体等の物品購入費に充てる予定である.
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