本研究の目標は脊椎湾曲の矯正を目的とした脊椎固定術用の医療機器を開発することにある。初年度では医療機器の基本構造を確立し、次年度では医療機器の運用に必要な専用の超音波加振器の開発を行なった。最終年度は両機器の研究で得られた知見を国際会議(12th IEEE International Conference on Human System Interaction IEEE HSI 2019)と投稿(論文Advances in Mechanism and Machine Science)にて発表した。両発表は共に研究内容が評価され、論文賞(Best paper、Best application paper award)を受賞した。また、最終年度後に改良版医療機器の研究結果をまとめた発表(13th IEEE International Conference on Human System Interaction IEEE HSI 2020)が確定している。 本研究期間において目的としていた「脊椎湾曲の矯正用機器の設計技術の開発」は十分な成果を得た。本研究期間において最も重要な人体内部で動作する機器の動作原理を確立した。超音波加振により、ねじ部を押す、もしくは回す変形を実現することで動作する構造を提案し、動作することを確認した。詳しい提案内容は同研究の特許と投稿論文に纏められている。また、本研究期間において目標としていた「人体を模した模型環境での運用試験」は十分な成果を得られなかった。人体環境の模倣は現在の技術水準に比べて容易ではなく、環境の再現が不十分であったことが原因である。その為、本研究では環境への依存の少ない方法として低侵襲な加振器の設計開発を行い、異なるアプローチでの運用を提案した。低侵襲加振器の開発を行い、加振部設計手法の確立等の一定の成果を得た。低侵襲加振器の研究結果は国際会議論文に纏められている。 本研究で得られた成果は超音波を利用した医療機器の新たなアプローチであり、矯正器具への利用のみならず、人体内部に埋没する機器の新たな運用法の基礎となる技術であり、今後も継続的に研究を行う予定である。
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