研究課題/領域番号 |
17K13044
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
有久 勝彦 国際医療福祉大学, 福岡保健医療学部, 講師 (90711359)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リスク評価 / ヒューマンエラー / 医療事故 / 転倒・転落 / タイムプレッシャー |
研究実績の概要 |
平成29年度は、ヒューマンエラーに対する評価法を作成し、その妥当性についての検証を行った。 ヒューマンエラーの測定すべき因子を明らかにするために、Expertがリスクを判断する際に何をリスクとして捉えているかを探索した。Benner(Benner,1984)のいうExpertの条件を満たす対象者に、危険状況が描かれたイラスト5場面の中で何をリスクとして判断したか、またその危険の程度はどのくらいかを4段階で判定してもらい、各イラストにおけるリスク状況を抽出してもらった。リスク状況については内容をラベル化しカテゴリー化を行った。さらに、リスク内容のカテゴリーの出現頻度、危険の程度の中央値について算出し、出現頻度と危険の程度の中央値における積をとり、その数値が大きいものについて得点化を行った。また、リスクについて発見されにくいが危険の程度としては大きいものについても加算得点を与えることとした。 作成した評価法については、Time-Pressure Kiken Yochi Training効果測定システム(以下、TP-KYT)と名づけ、よりExpertの危険発見の能力を捉えやすくするため評価に時間制約を加えることとした。TP-KYTの評価法としての妥当性については、Expert群、Competent群、Advanced Beginner群、Novice群で得点を比較したところExpert群は他の群より有意に得点が高いことが分かり、Expert群とCompetent群に基準点が存在することも分かった。 他検査との点数の関係性については、データが現在のところ不足しており、まだ結果としては表せていない。今後、30年度の計画を進めつつTP-KYTと他検査との点数の関連性についても検証していく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
29年度に実施予定であったTP-KYTの他の評価との相関を調査するにあたり、NASA-TLXおよびN-CABのデータ取得数が少ないため十分な相関を見ることができていない。 しかし、並行して30年度実施予定であるTobii Pro Glasses 2を用いたデータ取得をプレテストを含め始めており、部分的にみると若干進捗状況は遅れているが、経過は順調に推移していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、29年度に得られた結果を基にし、作成したTP-KYTの評価法について評価得点の妥当性をさらに検証するため、ExpertおよびNon Expertが危険状況の把握についてどのように把握しているのかを視線計測により量的に明らかにする予定である。視線の計測については、Tobii Pro Glasses 2を用い視線移動距離、視線注視時間の差を比較する。視線に関して得られたデータをさらに解析し、視線の違いがどのように評価の得点に影響しているかを分析する。 本年度は2年計画の最終年度であるため、これまでの研究成果のまとめを行い、広く公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
29年度における次年度使用額が生じた理由については、冊子印刷が次年度に持ち越したため物品費が安く計上されたこと、旅費もデータ取得の回数が今年度は少なく費用が抑えられたことの2点が挙げられる。 30年度の使用計画として、冊子印刷を1,000部行うこと、データ取得のための旅費及び謝金が必要であること、そして英文誌への投稿のための費用が必要になることを考えており、29年度使用できなかった費用も30年度は合算して使用する計画である。
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