研究課題/領域番号 |
17K13046
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
佐々木 永太 国立感染症研究所, 血液・安全性研究部, 研究員 (40762216)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ワクチン / アジュバント / 安全性評価 / 免疫毒性 / バイオマーカー / PBMC |
研究実績の概要 |
平成29年年度では、ヒトPBMCに全粒子不活化インフルエンザワクチン (WV), インフルエンザHAワクチン (HAv)、CpG K3またはPoly I:Cを添加し、安全性評価マーカー遺伝子 (マーカー遺伝子) の発現レベルを解析した。その結果、ヒトでの副反応が比較的高頻度で認められるPoly I:CおよびWVを添加した際には、一部のマーカー遺伝子の発現レベルが、無処置コントロールや副反応報告の比較的少ないHAv添加時と比べて有意に上昇することを見出した。これらの結果から、いくつかのマーカー遺伝子はPBMCを用いたワクチン・アジュバント評価に応用可能であることが示唆された。また、この時の培養液中のサイトカイン濃度を測定したところ、IL-6やTNF-alphaなどの炎症性サイトカインの分泌が認められた。これらのサイトカイン濃度は、マーカー遺伝子の発現レベルと相関傾向が認められた。このことから、バイオマーカー遺伝子は、ワクチン・アジュバントの炎症誘発性を反映している可能性があることが見出された。 バイオマーカー遺伝子を用いた最適試験条件について検討した。バイオマーカー遺伝子の発現レベルは、ワクチン・アジュバント添加24時間後に顕著に認められ、またアッセイに必要な細胞の播種密度等の条件を決定した。さらに、マーカー遺伝子の発現レベルを短時間で解析するための測定手法 (QuantiGene Plex (QGP) 法) についても構築した。 PBMCドナーによるワクチンへの反応性の差を検証するために、別ドナー由来のPBMCを用いた解析を実施した。その結果、バイオマーカー遺伝子の発現レベルにはドナーによる差が認められるものの、ワクチン・アジュバントによるバイオマーカー遺伝子の発現変動には、ドナー差は認められない傾向があることを見出した。次年度にかけて、更に解析ドナー数を増やす予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度では当初の目標とおり、安全性評価マーカー遺伝子がヒトPBMCを用いた培養評価系に応用可能であることを見出した。さらに、試験条件の決定を行い、PBMCを用いたワクチン・アジュバントの安全性評価系構築の基盤を構築することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度では、下記の目標に向けた研究を推進する。 平成29年度で用いたアジュバントに加え、より多くの種類のアジュバントを用いた解析を実施する。 ドナーによるPBMCの反応性の差を明らかにするため、年齢や性別を考慮し、様々なPBMCを用いた解析を実施する。 バイオマーカー遺伝子発現の鍵となっている細胞の同定を目指し、ワクチン・アジュバントの毒性発現機序の解明に結びつけることを目指す。 分泌サイトカインについても考慮し、マーカー遺伝子とサイトカイン濃度を組み合わせたより頑強性の高い安全性評価システムの確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 年度末納品等にかかる支払いが平成30年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。平成29年度分についてはほぼ使用済みである。 (使用計画) 上記のとおり。
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