研究実績の概要 |
平成30年度では、ヒト末梢血単核細胞 (PBMC) に各種アジュバント (R848, CpG K3, Pam3CSK4, DMXaaおよびPoly I:C) を添加した際の安全性評価マーカー遺伝子 (マーカー遺伝子) の発現レベルを解析した。また、複数ドナーのPBMCを用い、ドナー間のバイオマーカー遺伝子の発現変動応答の差を解析し、評価系としての安定性を評価した。その結果、バイオマーカー遺伝子発現応答は、1型インターフェロン (IFN) 誘導型アジュバントであるR848, poly I:C等で顕著に認められた。このことから、PBMCとバイオマーカー遺伝子を用いた評価系では1型IFN関連のシグナルを主に検出していることが示唆された。ドナー間でのバイオマーカー遺伝子発現変動の差を解析したところ、ドナーにより、バイオマーカー遺伝子の発現変動幅がおよそ2-50倍程度あることが明らかになった。そこで、各ドナーのPBMCにおいて、バイオマーカー遺伝子を網羅的かつ顕著な発現上昇を誘導する毒性参照用ワクチン (RE) を添加した際の発現レベルに対する相対発現量を算出し、ドナー間の差が補正されのか検証した。その結果、3つの遺伝子を除き、ドナー間の反応性の差が減少することを見出し、評価系としての有用性が飛躍的に向上することが見込まれた。 さらに、バイオマーカー遺伝子発現の鍵となっている細胞を探索するため、1型IFN産生を担う形質細胞様樹状細胞 (pDC) をPBMCから単離し、pDCとそれ以外のPBMC含有細胞におけるバイオマーカー遺伝子発現量を解析した。その結果pDCでは、それ以外の細胞集団よりも、ワクチン添加によって誘導される遺伝子発現上昇レベルが顕著に高いことが明らかになった。このことから、PBMCに含まれるpDCがバイオマーカー遺伝子発現に重要であることが明らかとなった。
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