研究課題/領域番号 |
17K13052
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 明良 京都大学, 医学研究科, 助教 (50762134)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 末梢神経 / 低出力超音波パルス / 物理療法 / 理学療法 / リハビリテーション |
研究実績の概要 |
末梢神経再生における低出力超音波パルス(LIPUS)治療の効果検証を行うために、まず末梢神経再生過程の評価システムの検討を行った。これまでの評価では組織学的および電気生理的学的な評価が主であったが、運動機能を直接的に評価する方法は限られており、Sciatic Functional Index(以下SFI)というフットプリントを用いた方法がゴールドスタンダードであった。しかしながら、SFIは損傷後1~2週の早期では評価が困難であることなど、課題がいくつか残されていた。そこで我々は、三次元動作解析装置を用いた運動機能評価システムを開発した。ラット坐骨神経損傷モデルを作成して下肢関節運動を評価した結果、toe off期における足関節および足趾関節角度を解析することで、SFIよりも統計学的に有意に神経再生を反映することを明らかにした。これら評価システムを用いて、本研究テーマの一つである成熟ラット坐骨神経再生におけるLIPUSの至適強度検証を行った。LIPUSの疑似照射群および30、140、250 mW/cm2(spatial average, temporal average: SATA)の3段階の強度を用いて検討した結果、140mW/cm2強度群で最も再生促進効果が認められ、疑似治療群に対して軸索数および髄鞘径が約30%増大した。SFIおよび三次元動作解析装置を用いた運動機能評価においても、損傷後2週および3週時点で統計学的に有意な回復を認めた。以上のことから、140mW/cm2強度のLIPUS治療は、ラット坐骨神経再生過程を促進する物理療法として有用であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
三次元動作解析装置を用いた運動機能評価システムを新たに開発し、初年度のテーマである成熟ラットにおける効果検証を終えた。さらに平成30年度のテーマであるLIPUSの至適強度検証をすでに終え、現在その作用メカニズムの解明を行っている。以上のことから、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
末梢神経再生における低出力超音波パルス(LIPUS)治療の作用メカニズムの解明を進める。特に、神経成長因子や免疫細胞に対する影響を中心に解析する。研究開始当初は予定していなかったが、分子生物学的な解析を広く且つ深く行うために、今後は実験動物としてラットに加えてマウスを用いる。さらに、神経細胞で特異的に蛍光タンパク質を発現する遺伝子組み換え動物を用いて、神経軸索再生過程を時空間的に解析する。その取り扱いに関しては「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」を始めとする関連法令を遵守し、所属大学の「遺伝子組み換え実験安全委員会」の承認を得て使用する。
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