研究課題/領域番号 |
17K13053
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西部 真理子 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (50638757)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リーリン / 大脳皮質機能 |
研究実績の概要 |
脳血管障害後の運動機能回復の鍵を握るのは大脳皮質運動野の代償的な可塑性である。本申請では、この可塑性における巨大分泌リポタンパク質リーリン (reelin) の機能に注目している。リーリンは発達期の大脳皮質6層形成に必須のタンパクであり、またその発現は成体においても認められる事から脳可塑性との関連も指摘されている。リーリン欠損モデルおよび中枢-骨格筋の相互的な作用に着目した運動野可塑性変化を検討する。 1: 「非損傷マウス大脳皮質でのリーリンの働き」 梗塞モデルでのリーリン関与を調べるために、まず非損傷リーリン欠損マウスでの大脳皮質機能について調べた。リーラーホモ接合型 (リーラー-/-)では、大脳皮質で上肢を動かす際に必要な電流閾値がWTよりも2-3倍高い事が分かった。この生理学的手法で得られた結果は、皮質特異的にリーリン下流をノックアウトしたfloxed Dab1マウスでも同じく得られた。皮質で必要な電流閾値は小脳異常がないfloxed Dab1マウスでも有意に高い事から、リーラー-/-の小脳異常によるものではない事がわかる。また、リーラー-/-とfloxed Dab1マウスで共に電流閾値は層構造特異的である事を示した。リーラー-/-での骨格筋収縮に必要な皮質からの電気刺激値の差はリーラー-/-の中枢神経層構造異常の他にも、骨格筋の神経支配の違いによる可能性が考えられた。そこで、筋電図と上肢筋の神経筋接合部の形態・アセチルコリン受容体の構成成分と筋組織を調べた結果、末梢神経には異常がない事が明らかになった。 2: 「脳梗塞後の反復把握運動療法 (リハビリテーション) に伴う運動神経可塑的変化が感覚神経に依存しているのかの解明」 新たな梗塞モデルの作成を終え、感覚神経障害モデルを確立中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 概ね順調に進展している 本申請課題では、リーリン欠損マウスを用いた皮質電気刺激閾値に関しての実験は終了した。非損傷リーラー-/-マウスを用いた実験では、大脳皮質で上肢を動かす際に必要な電流閾値がWTよりも2-3倍高い事を示した。その生理学的手法で大脳皮質で観察された現象は、皮質特異的にリーリン下流をノックアウト可能な floxed Dab1マウス(皮質層構造がリーラー-/-と類似している)でも観察された。従い、皮質で必要な電流閾値はリーラー-/-小脳異常は関係がない事を示した。また、リーラー-/-とfloxed Dab1マウスで共に層特異的に電流閾値は変化した。末梢神経異常の可能性を調べた結果、異常がない事を明らかにした。これらの結果は2018年3月にBrain structure and functionで報告した。
2. 概ね順調に進展している 新たな梗塞モデルの作成は確立できたと考えている。感覚神経障害モデルを確立中であり、組織学的手法を用いた解析を進める。
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今後の研究の推進方策 |
1. 予定通りに29年度中に実験は終了し、2018年3月にBrain structure and functionで実験の成果を報告した。
2. 当初の予定通りの実験計画で推進する。脳梗塞後の回復過程を追い、脳損傷後の代償神経形成における感覚神経の役割を示すため神経トレーサーを用いて皮質脊髄路と皮質間の運動系シナプス経路の構築と、上肢筋と脊髄間のシナプス経路を検証し、神経可塑的変化における感覚神経の重要性および、脳・脊髄・骨格筋の連動性・双方向性の存在を検討する。
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