研究課題
脊髄損傷は,運動障害および感覚障害を始めとする重篤な機能障害を残存することの多い疾患として知られている.その中で,間葉系幹細胞 (Mesenchymal stem cells: MSCs)を用いた多くの臨床試験が行われている.近年では,MSCsを採取する組織によってMSCsの特性が異なることがわかってきた.しかしながら,脊髄損傷に対し最も治療効果を発揮するMSCsについては一定の見解が得られていない.さらに,細胞投与の効果を最大限発揮する治療手段のひとつとしてリハビリテーションが挙げられる.脊髄損傷のような重度運動障害を呈する場合,免荷装置の活用によってより質の高いリハビリテーションを行える可能性がある.本研究では,由来の異なるMSCsの静脈内投与効果を検討すること,さらには免荷装置を使用したリハビリテーションを行い,その治療効果を検討することを目的とした.今年度は,平成29年度,平成30年度に引き続き,移植に適したMSCsの検討を継続した.さらに,ラット脊髄損傷モデルへの細胞投与効果を運動機能,電気生理学的観点から評価した.また,in vitroでの神経細胞モデルを用い,MSCsによる神経保護効果についても検討を行った.その結果,神経関連遺伝子であるSnailおよびSlugの発現は,他のMSCsと比較して,頭蓋骨MSCsで有意に高かった.神経栄養因子として知られるBdnfおよびGdnfの発現は,頭蓋骨MSCsで有意に高かった.bFGFの発現はMSCsの由来によって特徴的な差異を認めなかったが,Vegfの発現は,脂肪MSCsにおいて有意に高かった.骨髄MSCsおよび頭蓋骨MSCsをラット脊髄損傷モデルに投与し運動機能改善に与える影響を検討したところ,頭蓋骨由来MSCs投与群で運動機能が有意に改善した.in vitroにおける神経保護効果についても頭蓋骨MSCsが優れていた.
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
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