本研究の目的は,近赤外分光法(NIRS)を用いた運動イメージの客観的評価方法の開発・検討を行うことである.最終年度はこれまでの結果を基に追加実験を行い,対象者16名を被検者として研究を行った.初期トレーニング及び最終期トレーニングの前後の比較にて,補足運動野にのみOxy-Hbの有意な増大を認めたが,その他の関心領域には有意差を認めなかった.本研究では初期トレーニング後には一定の課題の学習を得ることはできたが,習熟した段階ではないことから,有意なOxy-Hbの変化の増大を認めず,最終期トレーニング後に有意な増大を認めた.これは,先行研究と一致する結果であり,NIRSにおいては補足運動野は運動イメージする課題が習熟した段階でないと脳血流動態の増大が生じないことが示された.また,初期トレーニング前後,最終期トレーニング後では脳血流動態変化に異なる結果を示した.初期トレーニング前のMI中は全体的に脳血流動態は増大せず,初期トレーニング後に全体的に増大していた.特に前方部分の前頭前野や前補足運動野などに高い活性化を示していた.逆に最終期トレーニング前後で補足運動野に加えて感覚運動野の脳血流動態の増大を示す結果となった.さらに,有意差を認めた補足運動野のOxy-Hbの変化とVAS得点において,初期トレーニング前と最終期トレーニング後に有意な相関を認めた. これらの結果より,運動イメージができていない段階と課題が習熟し運動イメージが十分できている段階はNIRSを用いた脳血流動態変化から区別できる可能性があることが明らかとなった.但し,課題の学習が途中段階で行われた運動イメージについては区別することが難しい.したがって,NIRSを用いて補足運動野の脳血流動態を参考に運動イメージが鮮明にできているかどうかを判断できる可能性があることを示唆した.
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