研究課題/領域番号 |
17K13069
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
吉川 輝 昭和大学, 医学部, 助教 (90737355)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 脳損傷 / 皮質脊髄路 / 運動負荷 / 運動機能回復 / 動作分析 / 代謝 / 遺伝子 |
研究実績の概要 |
脳損傷後の運動機能の回復を目的として運動療法が行われる。運動療法は破綻した神経回路網の修飾を促進することにより効果を発揮すると考えられている。しかしながら、運動療法が機能改善をもたらす詳細は未だ十分に理解されていない。そこで、当該研究は、一側脳損傷モデルマウスに対して運動療法としてトレッドミル走行課題を実施し運動機能の評価、皮質脊髄路および四肢筋の組織学的、生理学的検証、さらにこれらに作用する因子の探索を行い運動療法の作用を明らかにすることである。 これまでの我々の研究では、脳損傷モデル動物にトレッドミル走行の運動課題を課し、走行中の動物の代謝を測定することで運動負荷量を定量的に表現することを可能とした。さらに、運動障害に対してこれまで既存の評価方法に加え3次元歩行分析を行い脳損傷後の四肢の動きの変化を運動学的に見出すことに成功した。 当該年度は、脳損傷モデル動物に対して運動負荷量をモニタリングしたトレッドミル走行課題を行う運動群と走行課題を行わない非運動群に分け、4週後に2つの検証を行った。一つ目は、歩行中の後肢の動きの変化を運動群と非運動群で3次元歩行分析法を用いて比較した。一歩行周期における歩行スピード、遊脚期、立脚期などのパラメーターは運動療法の有無による影響を受けていなかった。一方、足、膝そして股関節において、運動療法によって関節の動きに改善が見られる部位と変化がない部位の存在が分かった。2つ目の検証は、これらの関節の動きを担う筋が運動療法の有無によりどのように修飾されるかをマグヌス法で調べることである。麻痺側の筋に電気刺激を与えた場合、損傷後1ヶ月では両群で差は見られなかったが、カリウムイオンによる最大収縮力の評価では、運動群は非運動群に比べ有意に収縮力が増大することが見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は、脳損傷モデルマウスに対して運動療法を実施する運動群、非実施群に分けて、それぞれの動物から各組織を採取しPCRにて運動療法により影響を受ける候補遺伝子を抽出する予定であった。しかし、3次元での運動学的な評価により、運動療法が歩行中の関節運動に影響を及ぼしていることがわかった。そのため、その関節運動に関わる筋の作用についてより詳細に調べることを行ったため、当初の計画からやや遅れてしまった。筋の生理学的な作用を検証する際、摘出の不手際および各種条件設定に時間を要してしまった。また、筋の組織学的な検証では、免疫染色に使用する抗体の選定および染色条件を決定ための時間を多く要してしまった。しかし、現在は上記の問題は解消し、因子として検討している筋の免疫組織学的検証を行っている。組織学的な検証後、すぐにPCRに取り掛かる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、筋の組織学的検証を継続的に行い、その上で検討しているいくつかの因子に対してPCRを行う予定である。PCRは筋、脊髄、大脳皮質に対して運動群、非運動群で行う予定である。それにより運動によりターゲットとして考えている因子の遺伝子発現と組織学的な変化の両者を確認することができると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、PCRを実施する予定であったが、動物の運動学的検証、筋の電気生理学的実験を優先したこと、さらに抗体などの実験試薬を安価なタイミングで購入できたために残金が発生した。 次年度は、動物飼育に関連する備品、モデル動物作成に関わる試薬や備品、免疫組織化学で使用する試薬およびPCRなど分子生物学的研究に必要な物品を購入する。研究により得られた結果を論文、学会で発表するために使用する。
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