研究課題/領域番号 |
17K13071
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
永野 ひかる 大阪府立大学, 総合リハビリテーション学研究科, 研究員 (10748924)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 骨格筋 / 筋肥大 / 硫化水素 |
研究実績の概要 |
骨格筋萎縮は患者のQOLの低下につながる重篤な状態であるにも関わらず、その治療法は確立されていない。本研究では、運動による骨格筋肥大のメカニズムにおいて『H2Sによるタンパク質S-スルフヒドリル化修飾』がトリガーとして機能していることを明らかにする。ガス状生理活性物質である硫化水素(H2S)ドナーであるNaHS(硫化水素ナトリウム)を用いて骨格筋細胞株C2C12筋管細胞を筋管直径計測によって検討したところ有意に筋管直径の増大が観察された。また、C2C12筋管細胞へのH2Sドナー(GY4137)添加によってリン酸化mTOR、リン酸化S6 kinase(S6K)などの肥大した骨格筋において活性が上昇する筋合成系タンパク質の発現、活性上昇をWesturn Blotを用いて明らかとした。加えて筋管細胞肥大の指標である細胞骨格タンパク質(ミオシン・アクチン・チューブリン)の発現増大も観察された。運動負荷誘導性骨格筋肥大はCa2+チャネルを活性化し、細胞質内Ca2+を上昇させ、mTOR系の活性化を活性化させることが報告されている。H2Sによる骨格筋肥大は細胞質内Ca2+を介した機構であることを実証するため、硫化水素(H2S)ドナーであるNaHSを処理後のC2C12筋管細胞質におけるCa2+濃度をカルシウム蛍光プローブFluo-4 AMを用いて蛍光強度によって検討した。NaHSを処理後のC2C12筋管細胞において蛍光強度の上昇が認められた。さらに、硫化水素(H2S)ドナーであるNaHSと細胞内Ca2+キレート剤を同時に処理すると筋管細胞肥大の指標である細胞骨格タンパク質(ミオシン)の発現量が減少した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は主に骨格筋細胞株C2C12を用いて、硫化水素の骨格筋肥大メカニズムの検討を行った。予定通り順調に研究を遂行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は主に生体内H2S産生経路、骨格筋内のH2S動態を検討する。生体内H2S産生酵素(シスタチオニン-シンターゼ:CBS・シスタチオニンγ-リアーゼ:CSE・3-メルカプトピルビン酸サルファトランスフェラーゼ:3MST)のいずれが骨格筋細胞内で機能しているかを明らかにする。また、システインによる骨格筋肥大効果、メカニズムをタンパク質発現、筋管直径計測、C2C12筋管細胞質におけるCa2+濃度計測によって解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用する試薬が高額なため。
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