研究課題/領域番号 |
17K13074
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研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
小島 翔 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 助教 (10780330)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 体性感覚刺激 / 皮質脊髄路 / 一次運動野 / 経頭蓋磁気刺激 / 運動機能 / 一次体性感覚野 / 脳磁図 / 感覚機能 |
研究実績の概要 |
末梢からの体性感覚刺激は,大脳皮質の興奮性を変化させることが報告されている.本研究では,一定時間の機械的触覚刺激による介入が運動に関与する一次運動野および感覚機能に関与する一次体性感覚野の興奮性に及ぼす影響を明らかにすることであった. まず,我々は複数種類の機械的触覚刺激方法を設定し,各20分間の刺激介入が一次運動野の興奮性に及ぼす影響を明らかにするため,各介入前後で経頭蓋磁気刺激を使用して一次運動野の興奮性を計測した.その結果,指先に対する刺激介入により運動に関与する一次運動野の興奮性が変動し,その変動は,機械的触覚刺激の刺激方法に依存することを明らかにした(Kojima et al., Neural Plasticity, 2018).また,各機械的触覚刺激介入が手指の運動機能に及ぼす影響を明らかにするため,各介入前後で運動機能評価(grooved peg board task)を実施した.その結果,一次運動野の興奮性を減弱させる単純刺激介入(刺激面全体を同時に刺激する条件)では,手指の運動機能の有意な変化が認めらなかったのに対して,一次運動野の興奮性を増大させる複雑刺激介入(ピンによる刺激が左から右へ順序良く移動する条件)では,手指の運動機能の有意な向上が認められた.さらに,介入による皮質脊髄路の興奮性変化と運動機能の変化との間に有意な相関関係が認められた.これらのことから,一定時間の機械的触覚刺激介入により,運動に関与する一次運動野の興奮性と運動機能は触覚刺激方法に依存して変動することが明らかとなった(Under Review).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究では,一定時間の機械的触覚刺激介入が一次運動野興奮性および運動機能に及ぼす影響を明らかにしており,概ね順調に研究が進展している.現在は,一定時間の介入が一次体性感覚野および感覚機能に及ぼす影響を明らかにするため実験を進めている.機械的触覚刺激介入は,一次運動野の興奮性を低下させる単純刺激介入と一次運動野の興奮性を増大させる複雑刺激介入の2条件とし,20分間の介入を右示指の指腹を対象に実施した.体性感覚野の興奮性は,脳磁界計測装置を用いて,介入前後において安静時の皮質活動および末梢刺激直後の皮質活動を記録した.また,感覚機能に関しては,介入前後で二点識別覚を記録した.現在,被験者10名の計測を終了しており,今後さらに計測を実施していく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,これまでの研究により効果を示してきた機械的触覚刺激方法を使用して,介入前後の体性感覚野の興奮性計測を継続する予定である.いくつかの先行研究により,感覚機能と体性感覚野の興奮性変動との関連や感覚機能と周波数解析による皮質活動との関連が報告されている.本研究においても,当初予定していた末梢刺激後の皮質興奮性だけでなく,介入前後において安静時の皮質活動を記録することでより詳細に介入効果を検討できると考えた.そのため,周波数解析を行うためのPC,解析ソフト等を新たに購入し,検討を行っていきたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた計測項目に加え,安静時の皮質活動の周波数解析を行う予定である.そのための解析用PC,解析ソフト等を購入に充当し,また,その他には,当初予定していた消耗品類の購入や学会参加費,国際論文投稿費に充当する予定である.
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